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僕の叔母は生きていれば90歳を出たところ。いま、社会で活躍している30代・40代の女性の祖母にあたる年代です。
多感な少女期に終戦を迎え、日本が戦後、
アメリカの擁護を受けながら、
新たな国家として復興するのと同じ歩みで大人になりました。
その時代、さしたる家柄にも才能にも美貌にも
恵まれていない女性の生き方は、かなり制限されていました。
20代半ばまでに結婚できた人は幸福とされましたが、
その後、自分を殺し、家族に尽くす長い人生が待っています。
一方、かわいいお嫁さんになれなかった人は、
世間から冷遇されるか、憐みや蔑みの目で見られるなかで
生きる道を選ばなくてはなりませんでした。
もちろん、例外はたくさんあって、
注目すべきイケてる女性の活躍は、
マスメディアで紹介されたり、
小説・映画・ドラマなどのモデルにもなったりしています。
しかし、叔母はそんな華やかな舞台に立つこともなく、
ありのまま自由に生きることもなく、
それでも喜びに満ちた人生への憧れ・欲求は人一倍あって、
それを抱えたまま、一生を過ごしたのではないかと思います。
本人の本当の気持ちはわかりませんが、
傍目には残念無念な女の一生。
けれども彼女のような、無数の昭和庶民の女性の、
満たされることのなかった憧れや欲求が、
現代の孫世代の女性らに受け継がれ、
活動力のエネルギーになっているような気がします。
亡くなって早や20年近く経ちますが、
なぜだか彼女は僕の心のどこかに棲み続け、
両親とは違った形で僕の人生を支え続けています。
生きている間に話を聴けなかったので、この作品における事実(と自分で思っている箇所)はせいぜい2~3割。
だから小説として、大部分は想像して書いたのですが、
フィクションの中にも、確かにこの世で生きた、
叔母の記憶を刻み込めたことに満足感を覚えています。
昭和の名もなき女性がどう生きたかの物語をお楽しみください。
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