おりべまこと電子書籍2月無料キャンペーン「叔母Q」

 

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2月26日(水)16:59まで実施中。

 

僕の叔母は生きていれば90歳を出たところ。いま、社会で活躍している30代・40代の女性の祖母にあたる年代です。

多感な少女期に終戦を迎え、日本が戦後、

アメリカの擁護を受けながら、

新たな国家として復興するのと同じ歩みで大人になりました。

 

その時代、さしたる家柄にも才能にも美貌にも

恵まれていない女性の生き方は、かなり制限されていました。

20代半ばまでに結婚できた人は幸福とされましたが、

その後、自分を殺し、家族に尽くす長い人生が待っています。

一方、かわいいお嫁さんになれなかった人は、

世間から冷遇されるか、憐みや蔑みの目で見られるなかで

生きる道を選ばなくてはなりませんでした。

 

もちろん、例外はたくさんあって、

注目すべきイケてる女性の活躍は、

マスメディアで紹介されたり、

小説・映画・ドラマなどのモデルにもなったりしています。

 

しかし、叔母はそんな華やかな舞台に立つこともなく、

ありのまま自由に生きることもなく、

それでも喜びに満ちた人生への憧れ・欲求は人一倍あって、

それを抱えたまま、一生を過ごしたのではないかと思います。

 

本人の本当の気持ちはわかりませんが、

傍目には残念無念な女の一生。

けれども彼女のような、無数の昭和庶民の女性の、

満たされることのなかった憧れや欲求が、

現代の孫世代の女性らに受け継がれ、

活動力のエネルギーになっているような気がします。

 

亡くなって早や20年近く経ちますが、

なぜだか彼女は僕の心のどこかに棲み続け、

両親とは違った形で僕の人生を支え続けています。

 

生きている間に話を聴けなかったので、この作品における事実(と自分で思っている箇所)はせいぜい2~3割。

だから小説として、大部分は想像して書いたのですが、

フィクションの中にも、確かにこの世で生きた、

叔母の記憶を刻み込めたことに満足感を覚えています。

昭和の名もなき女性がどう生きたかの物語をお楽しみください。