認知症の問題解決にアルバム認知症の問題対応にアルバム効果   心療回想士がつくった「人生まるごと回想アルバム」

 

東京ビッグサイトで12日から14日まで開催されている

「ギフトショー」に行ってきました。

太田区のブースの一角で「人生まるごと回想アルバム」を

紹介しているのは、株式会社テコデコドリーム研究所です。

 

アルバム本来の役割を見直す

 

アルバムに並んだ写真を見て、

過ぎ去りし日々を楽しむというのは、ごくありふれた行為で、

どこの誰でも実践していることのように思えます。

けれども、実はちゃんと写真を整理整頓し、

他者が見ても分かるよう管理できている高齢者はごく少数。

また、それが子供世代との間でコミュニケーションツールとして

活用されている例はさらに少ないようです。

 

「人生まるごと回想アルバム」は

そうしたアルバムが本来持つ役割を見直し、

可能性を伸ばすことによって生まれた商品です。

 

医療・介護の分野で注目の「回想法」

 

このアルバムは回想法で利用するシーンを

想定して作られています。

回想法とは1960年代初期に

アメリカの精神科医が開発したもので、

回想し過去の記憶をよみがえらせることで脳を活性化。

さらにその記憶を他者と共有し、

分かち合うことでより元気を出せるという精神療法です。

 

ご存じのようにこの10年ほどの間、

超高齢社会の進展に伴って認知症患者が激増。

それによってすでに相続などの分野で

様々な問題も起こっています。

そんな状況のなかで回想法は、認知症に対する予防効果、

あるいは症状の緩和・改善が期待できる非薬物療法として、

医療現場や介護施設、自治体の介護事業、

地域コミュニティーなどにも注目されています。

 

心療回想士のスタッフが開発

 

テコデコドリーム研究所ではスタッフ全員が

この回想法の基礎を学び、

心療回想士の資格を取得。

素材として写真を用い、

その写真を編集して作るアルバムに焦点を合わせました。

 

どうすれば親世代(高齢者)にとって、

より楽しく記憶をよみがえらせるものにできるか、

子供世代・孫世代とのコミュニケーションに

役立つツールにできるかを考えた上で設計し、

他にはないユニークな特徴と機能を持たました。

 

親子で楽しめるアルバムづくり

 

最も大きな特徴は、マグネット式アルバムを採用したこと。

家族みんなで閲覧しようという時、

アナログの分厚く重いアルバムを手に取るのは億劫で、

一人一人気軽に回して見るのに適していません。

 

また、スマホやタブレットのようなデジタル端末の画面上で

写真のデータを見るというスタイルだと、

みんなで見ている、家族で親の人生を共有している、

という感覚が持てません。

1ページずつ取り外しができるマグネット式アルバムは

そうした課題をクリアし、

家族で集まれば、自由に広げてみんなで見ることができ、

ページ追加も簡単にできるといいます。

 

また、記憶を呼び起こすためには“可視化”が重要。

家の中で目につく場所に写真があると、

ふとしたきっかけで大事なことを思い出したり、

家族への感情が深まることがあります。

 

通常、アルバムはしまっておくと中身が見えませんが、

ここでもマグネット式の利点を生かし、

お気に入りの写真があるページを

スチール製の壁や冷蔵庫に貼りつけて見ることができます。

また、アルバムそのものを360度開いて

そのままフォトスタンドとして使うこともできるといいます。

 

子供が親のためのアルバム編集者に

 

こうした特徴・機能を活かして同社では

「子供世代が高齢の親にためにアルバム編集者なること」

を推奨しています。

フィルムカメラの時代は、撮影後、

現像してプリントしなければ、写真を見られませんでした。

そのため、親世代が保存している写真の量・アルバムの量は

膨大であるケースが多く、

本人が亡くなった後は、(悲しいことではありますが)

そのほとんどを破棄しなくてはならないのが現実です。

 

それを踏まえて、テコデコのスタッフは、

子供世代が自分で見て貴重だと思える写真、

親のことを知らない子供や縁者の人たちが見ても

楽しめるような写真などを選び出し、

この「人生まるごと回想アルバム」を使って、

世代を超えて共有できるアルバム、

親孝行のツールとなるアルバムを作ってほしいと話していました。

 

施設のスタッフが心のケアにも手を伸ばせる

 

また、このアルバムは親が

介護施設で暮らすことになった場合にも

効果を発揮します。

介護施設のスタッフは、

親を「入居者=高齢の人」としか認知できないので、

毎日の食事や排泄の世話など、身体機能面でのケアはしますが、

感情面でのケアは天気のこと・庭の花のことなど

についてしか話せません。

 

生まれながらの高齢者など一人もおらず、

誰しも何十年という人生の道程、

無数の喜怒哀楽を経験してそこにたどり着くのですが、

スタッフはその一つとして想像するすべがないのです。

 

そんな時、このアルバムで子供時代や青春時代など、

親の人生のわずかな断片でも知ることができれば

「かわいいですね」「楽しそうですね」など、自然と会話が弾み、

心の介護・感情面のケアにも手を伸ばせるのではないか。

テコデコ研究所ではそうした期待も抱いています。

 

ちなみに、「回想法」の効果的な会話のポイントとして

「ほめ言葉は過去形にしないで現在形で話す」そうです。

 

還暦スタッフの第2のスタートアップ

 

テコデコドリーム研究所は、

もともとキャラクターと音楽コンテンツを

メイン事業とする会社で、

かつては各種アミューズメント施設やイベントなどで

若者や家族連れの人気を集めていましたが、

いずれも家庭の主婦を兼任していた3人のスタッフが

家族の介護に専念するために一時企業活動を休止していました。

 

その間、代表の池尾里香さんが施設に入居した

独身の叔母の家の整理をした際に、

それまで見たことのなかった若い叔母の

いきいきした姿の写真を大量に発見。

その中から自分の目で選んで一冊にまとめたアルバムを

本人に見せたところ、認知症気味だった叔母が大いに喜び、

互いに思い出を共有できたといいます。

 

同社の3人は、中小企業振興公社主催の

「事業家チャレンジ道場」で約2年間、

ものづくり・最新のマーケティング技術を勉強する中、

介護経験と回想法を活かした今回の事業を考案しました。

誕生日、母の日、父の日、施設の訪問時、

米寿や喜寿のお祝い事などに、

子から親への真心こもったプレゼントに使ってほしいというのが

彼女らの提案です。

 

永続的な親孝行の実現をサポート

 

「人生まるごと回想アルバム」は、

葬儀の遺影や式場の思い出コーナーの写真などに

使えることはもちろん、

その後の法事の場でも集まった人たちに

親の人生を偲んでもらうこと、

また、孫やその後の世代に伝えていく

「ファミリーヒストリー」としても

役立てることができるといいます。

 

池尾さんと、実の姉である綿井さんは、

両親の法事の席で親戚一堂にこのアルバムを見てもらったところ、

たいへん盛り上がり、皆、新鮮な感動を受けたといいます。

それがまた両親に対する供養に繋がるのでしょう。

これは単にアルバムを販売するビジネスでなく、

アルバムづくりを通して、

永続的な親孝行の実現をサポートする事業

といえるかもしれません。

 

もしギフトショーに行かれる方は、

ビッグサイト南館にある大田区のブースで、

ぜひ実物を手に取ってみてください。

また、このアルバムのサイトはこちらです。

 

https://tekodekorecollection.com/