年賀状卒業生の皆さん、また会おう

 

「勝手ながら今年で年賀状を卒業させていただきます」

今年も何枚か、年賀状でこうした文面を見かけた。

ふだん、オンライン上でやりとりはしていないが、

連絡を取ろうと思えば、いつでも取れる人なので

いいと言えばいい。

 

べつに腹を立てるとか、いやな気持になるとか、

そういうことではないのだが、

それでも正直、ちょっと胸の中がモヤっとする。

 

どんな心境の変化だろう?

何か彼・彼女の身に何かあったのだろうか?

たしかにハガキ代は値上がったが、

そこまで節約しなくてはならないほど、

経済が困窮しているのか、

いやいや、まさか・・と、

あれこれ、どうでもいいことを考えてしまう。

 

「虚礼廃止」ということか。

僕は最初から義理立てするために

年賀状なんか出していないので、

「虚礼」をしているつもりはない。

 

仕事上の交流がなくなった人とは、

自然にやりとりもやめたし、

いまだ出しているのは、

やっぱり年一度は挨拶しておきたいなと

思う人ばかりである。

 

なので、ノリとしては中学生や高校生の時と変わらない。

あの頃の年賀状はすごく楽しくて、ワクワクした。

 

いかにもガキっぽい、面白い絵柄と文面は

50年以上経った今でもはっきり覚えている。

好きな女の子から来た年賀状はずっと大事に取っていた。

「お正月は○○神社で巫女さんのバイトやってます」と、

可愛いイラストを付けて書いてあった。

(家が遠かったのでその神社には行かなかったが)

 

そう考えていくと、

卒業宣言した人たちは、

僕とのやりとりも「虚礼」と捉えていたのかなと思う。

たぶん、それが「モヤっと」の正体だろう。

 

確かに、10年どころか、20年、30年、

一度も会っていない人もいた。

別に彼らを責める気はない。

僕の方が勝手にモヤっとしているだけだ。

 

それによくよく考えると、20代の頃は

ほとんど自分から出していなかった。

ちゃんと毎年出すようになったのは30代からだ。

いや、もしかしたら結婚してから、

子供が出来てからかもしれない。

よく憶えていない。

 

一時期は可愛い子供の写真、

幸せそうな家族の写真の年賀状がいっぱい来ていたし、

僕も息子が中学のころまでは

カミさんと息子と3人で撮った写真を

年賀状にして出していた。

 

あれっていま思えば、同じ立場の人たちはともかく、

そうでない人たちにとっては

かなり鬱陶しかったのかもしれない。

 

それに最近は個人情報開示のリスクが大きいので、

ああいうファミリー年賀状はヤバイのではないかと思うが、

小さい、可愛いお子さんをお持ちの方は

どうしているのだろう?

 

そして、もうこの世にいない人の年賀状も、

彼らの顔つきで何枚か思い出した。

去年が最後になってしまった友だちもいる。

 

長く生きていると、年賀状ひとつをめぐって、

あれこれ考えることがたくさんある。

 

年賀状文化の終わりということなのだろうか?

だからと言って寂しがっているわけではないが、

時代の移り変わりの一つの表れであることは確か。

 

LINEやメールなどで送られて来る

デジタルなご挨拶でも、

何十年か後、こんなふうに、

あれこれ思い出すことがあるだろうか?

と、ふと考え込んでしまった。