終活・終末期医療における差別・偏見なきAIの目

 

アメリカでAIによる終活・終末期医療ケアが進んでいる、

というテーマでコラム記事を書いた。

その際にリサーチした「PewResearchCenter」

というシンクタンクの調査を見ると、

アメリカ人の6割は

医療にAIが利用されることに不安を感じているという。

 

いくら優秀だって機械は機械。

人の身体を診ることなんてできっこない。

補佐的に使うことはあっても、

最終的に任せられるのは、やっぱり人間の医療者さ。

 

そう考える人が多いということだろうか?

 

そうでもないような気がする。

上記の調査が発表されたのは昨年(2023年)2月。

調査実施はその前の2022年12月。

この1~2年の普及度を考えると、

もし今、調査したら、

結果はもうすでに5:5になっているのではないか?

 

この調査で目を引いたのは、

AI導入を肯定的に捉える人の意見だ。

 

「医療ミスが減るから」というのは即座に頷けるが、

もう一つ、アメリカならでは(?)の理由があった。

「偏見や不公平な扱いの問題が解決する」という意見だ。

 

つまり、アメリカ社会においては

医療の場において

人種的・民族的な差別・偏見・不公平が

大きな問題になっているということだ。

 

AI・ロボットには心がない。感情がない。

人間にはあたたかさがある。

細かい心情の機微が理解できる。

だから人間のほうがよいのだ。

——その考え方自体が偏見ではないか?

 

人間は他の人間に相対するとき、

必ずといいほど先入観が入る。

人種・民族の違いはもとより、

社会的地位は自分より上か下か、

金持ちか貧乏人か、

利益をもたらしてくれる人か、そうでないか。

いろいろなバイアスがかかる。

 

AIを否定する人は

「人間はあたたかい、情がある」というが、

一方で人間は冷酷で残酷で利己的で、

差別と偏見に満ちているという点は

見逃している。

なかには素晴らしい徳のある医師もいるかもしれないが、

「医は仁術」という言葉はもはやファンタジーだ。

 

そういえば、昨日のニュースで、

障がい者が作るアートにAIの助言を入れて、

より良い作品にするという施策について伝えていた。

とてもいいアイディアだ。

ふつう、人間では「障がい者」という偏見にとらわれ、

妙に気を遣ってしまうなどして、

公平な目で批評し。助言することは難しいだろう。

 

その点、AIは曇りのない目を持った、

純粋な子どものようなものである。

しかもこの子ども、超絶頭がいいので、

最適解に導いてくれる可能性が高い。

 

しかし、そんな子どもは正直、怖い。

そりゃ怖いに決まっている。

「人間は偉いんだ」という自負を奪われ、

これまでの存在価値を貶められてしまうのだから。

だから人間はAIを怖れ、憎む。

 

この先、人間がAIを、

そして知性を持ったロボットを受け入れ、

うまく利用できるようにするためには、

AIとしっかり付き合って、いっしょに遊んで、

こうした怖れを払拭していくことが必要だと思う。