YouTubeで状況劇場の音源が上がっていたので、
思わず聴いてしまった。
1975年秋の公演「糸姫」の千秋楽の舞台。
じつはこの「糸姫」は僕らが演劇学校で上演した
唐作品の一つ(1979年7月)である。
紡績工場の女工と、
労働の価値を考える
しがないサンドイッチマンの男を中心に、
怪しい整形外科病院、
アドルフ・ヒトラーを狂信する院長、
紡績会社の跡取りのバカ息子、
そして、整形手術に失敗した女たちが
リボンの騎士となって登場。
地獄の天使ヘルスエンジェルスの
バイクまでが舞台を走りまわる
恐るべき妄想コラージュ。
とは言え、ちゃんと筋の通った物語になっていて、
2時間観客をくぎ付けにするのが、
唐十郎作品のすごいところ。
脚本(戯曲)はもちろん読んでいるが、
こんなライブ音源を聴くのは初めて。
かなりぶった切られていて、
たぶん半分強の尺になっているが、
見せどころ(聴かせどころ)はちゃんと抑えている。
それに相当良い席で録音したらしく、
50年近く前の録音と思えないほど音質が良い。
主役の絵馬(エマ)は李麗仙。
相手役の価(アタイ)は根津甚八。
二人ともめっちゃカッコよくて
改めてしびれて聞き惚れてしまった。
あまりに生き生きしているので、
どちらもこの世を去って久しいなんて信じられない。
唐さんが作る独特のリズムのセリフの群れは
美しい音楽のようだ。
また、最後に挨拶する唐さんの声が若々しく、
いたって“まともな人”のように聞こえるのが
なんだか面白い。
そして当時の観客の熱狂的な雰囲気も
きちんと記録されている。
ポスターは“ゲージツ家”篠原勝之。
唐十郎ワールドはインスピレーションを
いたく刺激するらしく、
横尾忠則以降、多くの美術家がポスター、チラシの
デザインを担当し、
その魅力的な絵も状況劇場の人気の一要素だった。
どうやら最近、これらのポスターは美術品扱いで、
ネット上でかなり高値で取引されているらしい。
また、クマさんこと篠原勝之氏は、
この戯曲を原作として同名の漫画本を出している。
「糸姫」とまた出会えて、とても嬉しい。
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