いま、運動系デイサービス施設の現場管理者である
Tさん(男性)の本を書いている。
Tさんは息子とさして違わない齢だが、
飲食業、スポーツ科学業(?)の職歴が深く、
そこで身につけた人間観察と
コミュニケーションスキルを活かして、
高齢者の運動指導に当たっている。
約10年前、学生時代に彼は
いわゆる養老院に研修で言ったそうだが、
そこにいた職員、というか施設の在り方が
大嫌いだったそうである。
「○○さーん、大丈夫ですか~?」
という甘ったるい声を出しておきながら、
裏で散々その人の悪口を言ったりする
偽善者ぶりに堪えられなかったという。
利用者も利用者で、人生放棄、
セルフネグレストの状態に近い人がほとんどだったらしい。
そんな彼が今、高齢者の相手をしている。
その施設の事情や成り立ちが違うので、
単純に比べてどうこうとは言えない。
ただ、彼が現在の利用者を
「高齢者」というカテゴリーに押し込めず、
ひとりの人間として対応していることは確かだ。
自分の祖父母のような人たちに対して
まるで家族か友だちのように
平気でタメ口をきくのも
絶対に失礼にならない、嫌われないという
自信があるからだ。
つまり、利用者の人間としての尊厳を
大事にしていることが伝わるからである。
特にこれからの高齢者は
そうしたことにとても敏感になるだろう。
自分を高齢者扱いする施設には行かないだろう。
彼ら・彼女らのプライドを傷つけないよう
対応するのはなかなか大変そうだ。
スタッフには医療や看護・介護の知識以上に
そうしたスキルやノウハウ、
人生観までが問われることになる。
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