結婚記念日。
気温が上がり、暑いくらいだったが、
29年前と同じように快晴。
彼女がマーガレット・ハウエルの
カフェに行きたいというので、
吉祥寺までいっしょにランチをしに行く。
目的のカフェは中道通りの商店街の奥にある。
土日などは賑わいのある通りだが、
週初めの月曜は休みの店も多く、比較的静か。
入口から結構奥まっていて、
当然、駅からも距離があるせいか、
他の街から遊びに来る人よりも地元の人が多いようだ。
最近知ったばかりだが、
マーガレット・ハウエルというのは英国の服デザイナーで、
モダンクラッシックを追究している人なのだそうだ。
高級ブランドらしいが、
いわゆる高級感や華々しさなどはなく、
一見フツーでシンプル。
しかし、よく見るとさりげなくカッコよくておしゃれ。
おとなのブランドというのだろうか。
そうしたテイストを反映して
カフェもごくシンプルなつくり。
ランチメニューはキッシュと
ローストビーフサンドの2種類。
デザートにキャロットケーキと
アーモンドオレンジケーキを食べた。
食事自体も見た目の派手さはないが、
中身がぎっしり詰まって美味しかった。
店のすぐ隣に公園がある。
何の変哲もない公園だが、
子どもが遊びまわる分にはじゅうぶん広い。
そして一本、シンボルツリーのように
高さ8メートルぐらいの木が立っている。
広げた枝の形がなんとも美しく、
その下ではこの近所の人らしい母子が
ピクニックシートを広げてお弁当を食べている。
少し離れたところではまた別の母子がいて、
女の子たちは地面に生えている小さな白い花を摘んで
お母さんにプレゼントしている。
窓越しにそんな光景を見ていたら、
ふと「パーフェクト・デイ」という言葉が頭に浮かんだ。
ヴィム・ベンダーズ監督、役所広司主演の
トイレ清掃員の日常を描いたあの映画に
なぜ「パーフェクト・デイズ(完璧な日々)」
というタイトルをつけただろう?
世界も人生も完璧どころか矛盾と不条理に満ちていて、
あまり環境に順応していない自分が
60年以上も存在し続けていられるのはなぜだろう?
つい1週間前に昔ながらの友人が死んだが、
そんなこともすっかり忘れてのほほんと生きている
自分とは何だろう?
戦争をしている国では、今この瞬間にも街が爆撃されて
大勢の人が死んでいるのにそんなことも知らん顔で
「完璧な日だ」なんて言っている
自分とは何者なのだろう?
じつは何の保証もないのに
明日もまだ生きているに違いないと信じ、
来年も結婚記念日にはお祝いをしようと思っている
自分とは・・。
答は出ないが、それでも気安く
「またあした」と言って眠れることは
おめでたいことなのだと思う。
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