とある金融会社のカレンダーをもらった。
本社がニューヨークあるらしく、
NYCの写真の12枚つづり。
これでもか!と出てくる
ハイテンションな街の風景は圧巻だ。
マンハッタンの摩天楼も、5番街も、タイムズスクエアも、
ブルックリンブリッジも、自由の女神も、
映画、ネット動画や写真、
テレビなどで見慣れているはずだが、
こうしたアナログ印刷でドン!ドン!ドン!
と12連発で見せられると異様な迫力がある。
そして若き日にニューヨークに
憧れていたことを思い出した。
外国暮らしの夢を果たしたのはロンドンだったが、
その前はニューヨークに行きたいと思っていた。
映画や本などでニューヨークの街の風景を見ると
ざわざわと胸が騒いだ。
それはゴージャスな美女を抱きたいという
欲望にも似ていた。
実際、1986年と1990年の2回、
それぞれ1週間余り、ニューヨークへ行った。
「ああ、おれは今、ニューヨークにいる」と、
しみじみ感動したことを憶えている。
いずれもまだ世界貿易センターのツインタワーが
健在だった時代の話だ。
今のこのニューヨークの写真を見ていると、
9・11の惨劇のことなどみじんも感じない。
20世紀の頃より、さらに高く、空へ向かって
にょきにょき伸びたビル群は、
あのテロの悪夢から完全に立ち直った
世界最強の国の、世界最高の金ピカの都であることを
高らかに誇示しているかのようだ。
実際、いくらドバイのなんちゃらタワーがすごいとか、
上海のかんちゃらビルがすごいと言っても、
ニューヨークほどには絵にならない。
やはり近代資本主義帝国としての歴史が違うぜ、
と思わせる風格がある。
しかし、そんなにすごいニューヨークだって、
金融エリートやスター芸能人・スポーツ選手
ばかりが住んでいるわけではない。
人口の大半はこの街をえっちらおっちら回している
普通の労働者、普通の庶民である。
そしてまた、その大半は物価高に苦しむ貧乏人らしい。
ちょこちょこと調べてみたら、
マクドナルドのスタッフの時給が3700円とあった。
単純計算で1日8時間、月に20日働けば、
収入は60万円近くに上る。
大した金額だと思うが、
ここでは60万円では1DKの部屋代で終わりだという。
その他、コーヒー1000円、ラーメン3000円とか、
物価はとんでもなく高騰していて、
年収1千万でも貧乏暮らしを余儀なくされるらしい。
ちょっと足を踏み外せばホームレスに転落だ。
みんなどうやって生きているんだろうと心配になる。
自分のことに話を戻すと、
この写真を見て美しいとは思うが、
40年前のように胸はざわめかない。
正直言うと、見ているだけでお腹いっぱい、
胸やけがしてくる感じ。
もうこの街に行きたいと思わないし、
なんだかうんざりした気分になってくる。
都市開発は終わらない。
高いビルを建てるマウント合戦も終わらない。
金持ちの金儲けも終わらない。
戦争もテロも終わらない。
いつまでこんなことが続くんだろう?としか思えない。
ゴージャスな美女は遠くからポヤーンと
見ているだけで十分だ。
ま、簡単に言えば、齢を取ったってことだけど。
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