認知症の人の頭のなかには
どんなファンタジーの世界が広がっているのか
興味が尽きない。
何度か、義母が夜中や早朝に起き出して、
食べ物などをガメていく話を書いたが、
きょうは部屋の中から「みかんせんべい」が発見された。
夜中にガメたみかんを布団の下に隠し、
そのまま寝たのでぺっちゃんこ。
当然、布団の下はみかんの汁でぐちゃぐちゃ。
発見者のカミさんはカンカンである。
俗にいう認知症の人の「問題行動」だが、
まぁこれくらいのことなら明日ふとんを干せば
いいだけの話だし、怒っても本人は憶えていない。
それよりもどうしてガメたものを食べずに、
こんなふうに隠したり、しまいこんだりしてしまうのか?
秋口はお腹が減るせいか、たいてい食べていたが、
最近、寒くなってからは備蓄しようとする傾向がある。
冬眠する動物みたいに食糧を蓄えておこうという
本能が働くのも理由の一つだと思うが、
どうもそうした即物的な理由だけではないような気がする。
幻の家族やお友だちと会話していることを考え合わせると、
どうやら義母の4畳半の部屋には異次元ドアがあり、
その向こうには彼女にしかわからないストーリーが流れ、
そのストーリーを生きているのではないか。
そして、そう生きることが彼女の存在の芯にある
アイデンティティ、生きる意味と
つながっているのではないかと思える。
というわけで、汁が抜けてぺったんこに
みかんせんべいを見ているうちに
義母のストーリーを解き明かしてみたいという
妄想にかられた。
その前に、明日晴れたら洗濯と布団干しをやろう。
みかんせんべいは食べてみたが、
パサパサしててさすがにおいしくない。
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ざしきわらしに勇気の歌を
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