コロナ禍の頃、観光業やお寺関係の仕事で、
政府が日本の観光立国化を目指し、
観光収益を上げるために、
インバウンド客の単価UPを
図っているという話をよく聞いた。
金のない旅行者から
無理やりふんだくるわけにはいかないので、
ターゲットは当然、世界の富裕層。
高額な料金に見合うだけの
日本文化の体験・最上級のおもてなしを
たっぷり盛り合わせて…という戦略を
いろいろなコンサルタント会社が入って企て、
かなり懸命にテコ入れしていたようだ。
その努力は報われた。
2泊3日の京都旅行に行って、
観光業者はその要請にしっかり応えたことが見えた。
本当に人気観光地の周辺の飲食店に入るには
富裕層クラスのお金が必要。
一般ピープルは食べ歩き用の屋台食やスイーツなどで
楽しんでね、という感じ。
宿代もコロナ前の2019年に比べ、
平均で3~4割値上がっているらしい。
(僕たちは山科駅近くのAirBnBに泊った)
実際、どの程度、単価UPを達成したかは
いずれ観光庁が成果のデータを上げるだろうが、
観光にも昨今の格差社会の在り方が
十二分に反映されているような気がする。
京都の秋の観光はまだまだこれからが本番。
自社と紅葉のライトアップが12月まで続いて、
大賑わいになりそうだ。
ちなみに観光立国になるということは
国家が成熟した証拠。
今あるもの・持っているものを見せればいい。
もちろん、その見せ方が問題で、
そこにいろいろ工夫は必要だけど、
観光業は莫大な資本や人材を投入して
新しく何かイノベーションを起こす産業ではない。
おとなになったニッポン。
リッチなニッポン。
けれども老化するニッポン。
個人と同じで、国家もこれからの生き方を問われる。
「まだまだ若くて元気ハツラツだ~」
なんて張り切ってると、ぎっくり腰にいなるのがオチだ。
何もかも下り坂の国が、
政治も社会機構も、上り坂の時と同じ運転していたら
おかしなことになるのに決まっている。
ネガティブに考えなくてもいいけど
早く昭和アタマの価値観から抜け出さねば。
でないと、ギックリ腰どころか、
脳や心臓にきて倒れちゃうよ。
★おりべまこと新刊
再読・風の歌を聴け
Kindleより発売。¥300
1979年のデビュー作「風の歌を聴け」から2023年発表の最新作「街とその不確かな壁」まで。ふたたび旅したハルキワールドの思い出・感想・評論をミックスアップしたエッセイ集。
はじめての人も、リピーターの人も、ハルキワールドを旅する時のガイドブックとしてご活用ください。
コメントをお書きください