週末の懐メロ157:ワイルドサイドを歩け/ルー・リード

 

1972年リリース。

セカンド・ソロアルバム「トランスフォーマー」に

収録され、ルー・リードの代表作となった歌。

 

この中で歌われるトランスジェンダーやゲイたちは、

NYCのアンディ・ウォーホールのスタジオ

「ファクトリー(The Factory)」に集まる

俳優たちをモデルにしたという。

 

LGBTQの人たちは、かつては音楽や文学や演劇、芸術—ー

いわゆる非日常の世界の住人というイメージだった。

そのことを考えると隔世の感がある。

そうなのだ。

この曲が歌われてから半世紀の時が過ぎた。

 

半世紀前は、ボブ・ディラン、ドアーズのジム・モリソン、

少し遅れてパティ・スミスなど、

いわゆる詩人系のミュージシャンが活躍した。

ルー・リードもその一人で、

文学性・芸術性に富んだ感性で

ロックの価値を高めたミュージシャンとして

評価されている。

 

彼が率い、アンディ・ウォーホールがプロデュースした

ベルベット・アンダーグラウンドも、

僕たちがロックに狂っていた70年代~80年代は、

「昔のカルトバンド」として大して注目されていなかった。

 

ところが、その人気と評価は

時代を経るごとにどんどん上がっていき、

いまやロック史上屈指のレジェンド「ベルベッツ」として

紹介されることが多い。

 

これはトランスジェンダーやゲイの歌ではあるが、

「Wild」のニュアンスをどう解釈するかで

いろいろな聴き方ができるところも面白い。

そして管理社会が進む今日、

良い意味でWildであり続けることはとても難しいと感じる。

 

ライブでもよく演奏され、

YouTubeでもたくさん上がっているが、

派手なギターやドラム、ファンキーなホーンが入った

エキサイティングなものが多く、

この曲の良さを損ねている気がする。

 

僕に散ってはこのオリジナルのスタジオ版がベスト。

リードのリーディングのような歌い方と

エレキベースとダブルベースを重ねた、

独特の雰囲気を醸し出すベースラインは

麻薬のようにやみつきになってヤバい。