週末の懐メロ154:夢のカリフォルニア/ママス&パパス

 

1965年にリリースされた「夢のカリフォルニア」は、

「東海岸(おそらくニューヨークを想定)は

どんより曇っていて寒いよ。

晴れててあったかいカリフォルニアに行きたいなぁ」

というかなり単純な歌だ。

 

けれども当時、カリフォルニア州にあるサンフランシスコ、

ロサンゼルスはヒッピー文化発祥の地。

愛と自由と平和について語り合おう、

ついでにセックスとドラッグもやっちまおう、

という精神的革命の波が押し寄せていた。

アメリカの若者のほとんどが

社会からドロップアウトするんじゃないかという

勢いさえ感じた。

 

そんな中で「夢のカリフォルニア」は

一種のメタファーと受け取られ、

どんより曇って寒い街は旧世界の象徴、

太陽輝くカリフォルニア

(サンフランシスコ、ロサンゼルス)こそ

われらが求める新世界――と解釈されたらしい。

 

と言ってもこの頃,

僕はまだ小学校に入ったばかりのガキで、

ヒッピーをリアルタイムで体験したわけではない。

後年、音楽雑誌などで当時のロック・フォークの先輩方が

「サマー・オブ・ラブ」やら「フラワーチルドレン」やらを

熱く語っているのをカッコイイなぁと思っただけだ。

 

そしてテレビの音楽番組で見た

1967年の「モンタレーポップフェスティバル」。

この曲を歌うママス&パパスを見て以来、

僕の中ではずっと「夢のカリフォルニア」は、

60年代のヒッピー文化の象徴として、

一種独特の響きを放っていた。

 

ママス&パパスはグループとしては

3年ほどしか活動していない。

他にもいくつかヒット曲はあるものの、

ほとんどこれ1曲で

1998年にロック殿堂入りを果たしたと言っていいだろう。

それほどあの時代とのマッチングは強烈だったのだ。

 

けれども、そろそろその幻想とも

別れを告げた方がいかもしれない。

そう思ったのは、ジャズシンガー、

ダイアナ・クラールが2015年にリリースした

カヴァーを聴いた時だった。

 

オリジナルのママス&パパスから60年。

言い表せない感慨が胸に広がった。

渋くてカッコよくて、

そしてあまりに懐かしさと哀愁に満ちた

「夢のカリフォルニア」。

秋の夜、聴きながら一杯飲まずにはいられない。

 

●夢のカリフォルニア/ダイアナ・クラール