1965年にリリースされた「夢のカリフォルニア」は、
「東海岸(おそらくニューヨークを想定)は
どんより曇っていて寒いよ。
晴れててあったかいカリフォルニアに行きたいなぁ」
というかなり単純な歌だ。
けれども当時、カリフォルニア州にあるサンフランシスコ、
ロサンゼルスはヒッピー文化発祥の地。
愛と自由と平和について語り合おう、
ついでにセックスとドラッグもやっちまおう、
という精神的革命の波が押し寄せていた。
アメリカの若者のほとんどが
社会からドロップアウトするんじゃないかという
勢いさえ感じた。
そんな中で「夢のカリフォルニア」は
一種のメタファーと受け取られ、
どんより曇って寒い街は旧世界の象徴、
太陽輝くカリフォルニア
(サンフランシスコ、ロサンゼルス)こそ
われらが求める新世界――と解釈されたらしい。
と言ってもこの頃,
僕はまだ小学校に入ったばかりのガキで、
ヒッピーをリアルタイムで体験したわけではない。
後年、音楽雑誌などで当時のロック・フォークの先輩方が
「サマー・オブ・ラブ」やら「フラワーチルドレン」やらを
熱く語っているのをカッコイイなぁと思っただけだ。
そしてテレビの音楽番組で見た
1967年の「モンタレーポップフェスティバル」。
この曲を歌うママス&パパスを見て以来、
僕の中ではずっと「夢のカリフォルニア」は、
60年代のヒッピー文化の象徴として、
一種独特の響きを放っていた。
ママス&パパスはグループとしては
3年ほどしか活動していない。
他にもいくつかヒット曲はあるものの、
ほとんどこれ1曲で
1998年にロック殿堂入りを果たしたと言っていいだろう。
それほどあの時代とのマッチングは強烈だったのだ。
けれども、そろそろその幻想とも
別れを告げた方がいかもしれない。
そう思ったのは、ジャズシンガー、
ダイアナ・クラールが2015年にリリースした
カヴァーを聴いた時だった。
オリジナルのママス&パパスから60年。
言い表せない感慨が胸に広がった。
渋くてカッコよくて、
そしてあまりに懐かしさと哀愁に満ちた
「夢のカリフォルニア」。
秋の夜、聴きながら一杯飲まずにはいられない。
●夢のカリフォルニア/ダイアナ・クラール
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