人はいくつになっても子ども時代の記憶を呼吸している

 

京アニ放火殺人事件の初公判とジャニーズ事務所の

記者会見が話題になった今週。

会見を聞く限り、ジャニーズ事務所は

「児童虐待」「人権蹂躙」の深刻さが

イマイチわかっていない。

 

これは事務所だけではない。

先日、テレビがやっていた一般人への街頭アンケ―トでは

「べつに社名を変える必要はないんじゃね?」

という意見が圧倒的に多かった。

 

こういうところはやっぱり

日本は時代の進化・国際基準から取り残された

「ガラパゴス」と言われても仕方ない。

ジャニーズの歌やダンス、演技に関する技術は

日本のエンタメの世界では確かに

ハイレベル・ハイクオリティだと思うが、

ここまで問題が大きくなり、

改革案もあの程度の甘さで、

単なる精神論で乗り切ろうとしているのを見ると、

この先、海外進出は絶望的で、

ガラパゴスの中で生き延びるしかなさそうだ。

 

ファンもマスコミも、大勢保護者がついているので

当分の間はなんとかなるのかもしれないが、

なんだかこの半世紀余りの日本の芸能の歴史も

モヤモヤした暗闇に包まれて見えてくる。

 

京アニ事件の青葉被告も

虐待から生まれたモンスターだという。

彼は過酷な体験を克服するために

「自分はクリエイターである」という妄想に入り込み、

その妄想が行動原理になって

あんな大事件を起こしたのではないかと思われる。

 

「トラウマだの、アダルトチルドレンなどと

いった考え方にこだわるな。忘れろ」という人もいるが、

人はいくつになっても、

子ども時代の記憶を呼吸して生きている。

認知症にならない限り、死ぬまで。

いや、認知症になっても、それは心の芯に食い込んで

怒りや悲しみの言動となって現れる。

日本人はそうした認識がまだ全然足りない。

 

じつは欧米の方が、児童虐待に関しては先進国だ。

現在の資本主義社会の発達は、産業革命時代に

好きに子供を働かせ、虐待し、搾取したのが

要因になっているという一面がある。

そこでどうにか生き延びて大人になった

1~2割ぐらいの子どもたちが、

また同じことを繰り返して資本主義社会は巨大化してきた。

要するに労働者の子供は奴隷と同じだったのである。

 

欧米はどうやらそれを反省し、

今になってやっと児童虐待・人権を重視するようになった。

幕末から明治にかけて日本を訪れた欧米の知識人は、

日本人がとても子どもを可愛がるのを見て驚き、

「日本は妖精の国」という報告書を

本国に送った人もいるくらいだ。

 

だからと言って、

日本は「もともと悪いのはおまえらじゃん」

なんて、もちろん食って掛かるわけにはいかない。

資本主義の恩恵を賜って豊かになった以上、

そうした欧米の負の歴史も他人ごとでなく、

ちゃんと自分事として取り込んで変化して、

この先に進む必要があるのではないかと思う。