アマプラで「シン・仮面ライダー」を見た。
すごいなと思ったのは、敵であるショッカーの設定。
悪の組織であるはずのショッカーは、
なんとこの作品では「人間の幸福を追求する組織」である。
フルネームだと「Sustainable Happiness Organization with Computational Knowledge Embedded Remodeling」。
「計画的知識を埋め込んで改造した持続可能な幸福の組織」
とでも訳せばいいのか。
それぞれの頭文字をつなげて「SHOCKER」。
もちろん、これは庵野監督の創作である。
怪人(改造人間)のモチーフが昆虫であるところを
考え合わせると、地球環境との調和も追求しているようだ。
当然、この幸福の追求は、
一般社会で生活する人間にとっては
歪んだおぞましいものだが、
主人公の仮面ライダー・本郷猛も、
ラスボスであるショッカーの首領も、
不条理な無差別殺人事件によって父や母を奪われた遺族である。
彼らの立場になって考えていくと、
つまり見方を変えると、ショッカーが目指すものこそ
正義と捉えてみてもおかしくない。
もちろん、本当のご遺族の方が
こうした考えを持つようになるということではないが、
原典の「仮面ライダー」が持つテーマ性を深堀りして、
現代に新たな世界観を築き上げた
庵野秀明監督の想像力・創造力はやはり尊敬に値する。
ゴジラやウルトラマンと違って、
仮面ライダーは等身大のヒーローであり、
この話は、僕たちの人生とごく身近な、
家族・友人・その周りの社会をめぐる物語とも言える。
1号・本郷猛と2号・一文字隼人との
人間関係・信頼関係の成り立ちも良い。
登場人物の中ではヒロインのルリ子がとてもよかった。
演じているのは、今やっている朝ドラのヒロイン役
(牧野博士の妻)の浜辺美波。
狂言回しのような役柄で、
彼女のセリフと行動によって
この話の世界観・構造が語られていくのだが、
彼女と彼女に対する本郷の愛あっての
「シン・仮面ライダー」という感じがする。
僕はテレビの「仮面ライダー」が始まった頃、
すでに小学校の高学年だったので、
やや冷めた目で見ていて、
初期シリーズ(1号・本郷猛のシリーズ)を
半分ほど見ただけだ。
ウルトラシリーズと違ってほとんど思い入れがないので、
今回も期待せず、事前情報もほとんど仕入れていなかった。
結局、劇場に行かず、アマプラで見てしまったのだが、
すばらしかった。
「幸福のために人間を改造する」というテーマのもとで
これだけの物語を作り得るのはすごいことだ。
「仮面ライダー」なんて知らない・興味ないという人も
ぜひ観て見るといいのでは、と思う。
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