70年代グラムロックといえば、
マーク・ボラン率いるT.レックス。
1973年にリリースし、
大ヒット曲となった「20th Century Boy」は、
20世紀の終わりにそのまんま和訳「20世紀少年」という、
浦沢直樹のマンガになり、その後、映画化もされた。
何となく意味深なタイトルだが、
歌詞には大した意味がなく、
「おれ、カッコいいだろ。
おまえの男になりたいんだ」みたいな歌。
ギターのリフはいま聴いても抜群にイカしているが、
それと同時に、このタイトルのせいか、
20世紀は本当に昔ばなしになってしまった感があって、
なんだかしみじみしてしまう。
グラムロックの始祖はデビッド・ボウイだが、
ボウイは時代ごとにファンキーになったり、
プログレっぽくなったり、
ダンスミュージックっぽくなったり、
さまざまに変化して多彩な顔と音楽を創り出した。
対してT.レックスは、グラムで世を席巻し、
グラムのままで終わった。
というのもグラムロックは70年代後半には人気が下落し、
T.レックスもすっかり影が薄くなっていた。
そんな矢先の1978年、マーク・ボランが交通事故で死亡。
T.レックスはほとんどボランのバンドだったので、
そのまま消滅してしまったのだ。
それでもほんの短い間だったが、鮮烈なヒット曲を連発し、
ロック史に貴重な足跡を残したT.レックスは
2020年にロック殿堂入りを果たしている。
ちなみにマーク・ボランが死んだのは30歳になる2週間前。
60年代から70年代前半、ロックに心酔する若者たちの間では
「30過ぎは信じるな」という言葉が浸透したが、
まるでそれを体現するかのような最期。
かつて大スターだったボランは、
ほんの数年で見る影もなく、酒や麻薬のせいで
激しく劣化していたらしい。
もちろん、自殺などではなく、
再起を目指している最中の自動車事故だったのだが、
この頃のアーティストたちには
潜在意識のなかに「30歳の壁」があったのかもしれない。
それにしても50年後も
やっぱりカッコいいT.レックスのロック。
残された音源・映像のなかで
ボランは永遠の「20世紀少年」として
ギターをかき鳴らし、歌い続ける。
明日7月1日(土)
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