週末の懐メロ130:ビコーズ・ザ・ナイト/パティ・スミス・グループ

 

1978年リリースのサードアルバム

「イースター」に収録された

「ビコーズ・ザ・ナイト」は、

ブルース・スプリングスティーンの未発表曲に

パティ・スミス自身が歌詞をつけた歌。

 

「ニューヨークパンクの女王」の異名を持つスミスだが、

この曲や「ロックンロール・ニガー」など、

よく知られた曲はパンクロックというよりも

王道のロックとしての美と力強さを湛えている。

 

パティ・スミスはもともと

そんなにアグレッシブな女性ではなく、

むしろ内向的な文学少女だったのではないかと思う。

故郷から出てきて1960年代のニューヨークで

青春時代を過ごすが、

当初はビートニクの詩人やシンガーソングライターの

“愛人”になることが目的だったらしい。

 

アメリカ人でも彼女の年代の女性は、

まだまだ男を表に立てて生きるというのが

基本的なライフスタイルだったのだろう。

 

ジョニ・ミッチェルと同様、

彼女も若くして母親となるが、

“愛人”ではなく、自身で創作ができると自覚し、

詩作や演劇などの芸術活動に打ち込むようになるのは

それより後の70年代のこと。

 

ミュージシャンとしてデビューしたのも20代が終わる頃だ。

その年齢的なこともあり、

他のガキっぽいパンクロッカーたちと違って、

パティ・スミスはどこか

「大人のパンク(?)」の風情を漂わせていた。

 

折れそうなほど痩せぎすの身体に

男っぽい服を着たファッションは、

「アンドロジナスルック(男っぽさ・

女っぽさにとらわれない両性具有的ファッション)」

のアイコンとして、当時も今も人気が高いようだ。

 

パンクの女王の時代を過ぎ、

結婚などで活動休止時期も長かった

パティ・スミスはその後、90年代に復活を果たし、

70代後半になる現在に至るまで音楽活動を続けている。

白髪になっても中身はいまだ「ビコーズ・ザ・ナイト」を

発表した時のまま。

45年の年月を重ねて「女王」の面目躍如である。

 

 

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