認知症患者に安心とハピネスを

 

ふと気が付くと、義母が部屋でお友だちと話している。

「つるの恩返し」ではないけど、

へたに覗かないほうがいいと思うので、

知らんふりをしているが、

相手はおそらく人形やぬいぐるみだろう。

正確なところはよくわからない。

 

お化けかも知れないが、

オバQとか、キャスパーとか、

怖くない、面白いやつならOK。

 

知らない人が客観的に見たら気味悪いと思うだろうが、

社会活動・生産活動と同時に、

こうしたこともまた人間の本質的な精神活動の一面である。

小さい子どもと同じだ。

 

僕がむかしやっていた&よく見た演劇の世界では、

幻想や妄想に駆られた変な人たちが舞台狭しと活躍し、

泣いたり笑ったり冒険したりしていた。

いわば、けっこう慣れ親しんだ世界・在り方なので、

そんなに驚いたりも引いたりもしない。

こんなところで演劇経験が役立つとは思ってもみなかった。

 

外に出ると義母は季節の歌を歌って歩く。

ここのところ、口ずさむのは

「花(春のうららの隅田川)」「おぼろ月夜」「春の小川」

「茶摘み(夏も近づく八八夜)」など。

陽気に歌いながら、

見知らぬ人たちにも挨拶したり、なれなれしく話しかける。

 

たぶん、ビジネス街とか、都会のど真ん中で

こんな人がいたら、怪訝な顔をされたり、

ドン引きされたりするのは必至。

 

しかし、川沿いの散歩道を行く人の多くは、

花や鳥を愛でながら割と心がゆるんでて、おおらかなので、

この人変だなと思っても大目に見てくれる。

挨拶にも返してくれたり、

適当に話を合わせてくれたりもする。

 

中でも外でも、不安に駆られるとおかしくなるのは、

健常者も認知症患者も同じ。

認知症でも安心できてハッピーでいられる環境は

ありがたいと思う。

 

 

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