今年の大河ドラマ「どうする家康」はどうやら、
「家康はいい人だったから天下を取れた」
という物語になりそうな気配だ。
もともと家康役が松潤なので、
初回のヘタレぶりから、
どうもそういう話になるんじゃ・・・
という気配はしていたが、
昨日の「氏真」の回でそれを確信した。
どういう話だったかは、
ネットであらすじを読むか、
NHKプラスを見るか、
今度の土曜の再放送を見るかしてほしいが、
とにかく家康は、追い詰めた今川氏真(溝端淳平)を
殺せず、助けてしまう、情に厚い“いい人”。
しかも氏真の奥さんがこれまた、夫思いのとてもいい人。
さらに、とっくの昔に出番が終わってたはずの
今川義元が回想シーンでよみがえり、
感動的なお父さんぶりを見せる。
野村萬斎をキャスティングしておいて、
あれで終わりかいと思っていたが、
最後(死んだ後だけど)にちゃんと見せ場を残して、
スポットライトを浴びせてくれた。
そんなわけで、友愛、夫婦愛、親子愛の
人情ドラマ3連荘で、泣かせるわ、泣かせるわ。
この後、今川氏真は、
戦国武将としては表舞台から退場するが、
家康の手引きで北条氏の領土に逃げて生き延び、
文化人となって、のちに密かに家康に影響を及ぼす。
いちおうそうした史実も踏まえてドラマ化している。
これまで今川親子なんて、
信長や信玄の引き立て役・滅ぼされた負け組として
ずさんな扱われ方しかされなかったが、
ここまで丁寧に人間的に描いたのは良かったと思う。
それにしても、昨年の「鎌倉殿」が陰謀・裏切り満載で
思いっきりブラック、そしてリアルだったのに対して、
こちらはまるで戦国ファンタジーかと思えるほどの
ホワイトぶり。
なにせファンタジーなので、阿部寛の武田信玄も、
岡田准一の織田信長も、ムロツヨシの豊臣秀吉も
ほとんどマンガの世界の人。
そして家康との対比で、
みんなとんでもない悪人どもに見える。
おそらくそういうのも狙いなのだろう。
もちろん、「幼稚」だの「大甘」だの
「戦国時代にこんなのあり得ねーだろ」という
手厳しい批評も飛び交っているが、
僕はこういう見方をしているので、けっこう面白い。
ナレーションでも「神の君」なんて言ってるが、
江戸時代には徳川家康は神さま扱いだった。
それが、250年後に明治政府として
権力を取り返した長州組などが
「幕府の元祖の家康は大悪人だった」と言って
ブラックタヌキのイメージを人びとに植え付けた、
とう説がある。
正義も悪も、歴史も人物像も、その時代の風向きによって
くるくる変わってしまうものだ。
事実は一つだが、真実は人の数だけある。
いま、時代は「いい人」の味方である。
かつて蔑まれていた「いい人」が持て囃される。
最後にはいい人が勝つ・笑う。
「どうする家康」は、そんな時代の空気を吸っている。
ブラック鎌倉殿は完成度が高く、
ラストも衝撃的だったが、
あれはちと悲惨過ぎた。
やっぱり同じようなものを続けざまに見せてはいけない。
少なくとも今年のこのドラマでは
ハッピーエンドになってほしい。
たとえそれがリアリティに欠けた、
ホワイトファンタジーであっても。
これから戦国時代の大波が押し寄せ、
いろいろな修羅場を潜り抜けねばならないが、
松潤家康は間違ってもダークサイドに落ちて
キャラ変などせず、
いい人のまま、白うさぎ君のままでがんばってほしい。
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