アネモネと小説

 

お彼岸の花という感じではないが、

行きつけの花屋でアネモネが目に留まり買った。

茎の歪み具合など、何となくサイケなイメージがあって、

クリムトかエゴンシーレの絵画に

あったような気がしていたが、

アネモネを好んで描いたのは、印象派のルノワールだった。

 

僕にとってアネモネというと思い起こすのが、

村上龍の小説「コインロッカーベイビーズ」だ。

この物語のヒロインの名がアネモネだった。

 

20歳の頃にのめり込むように読んだ。

その割に内容を覚えてないのだが、

文体と物語全体のロックなノリが斬新で、

当時、村上春樹と「新しい小説」の双璧を築いていた。

 

当然、影響力の大きな作品だったので、

ネット上にいくつも書評や紹介文も載っているが、

どれを読んでも何か違和感を感じる。

僕が読んだ「コインロッカーベイビーズ」は

こんな話だったっけか?

アネモネはこんな少女だったっけか? という感じ。

 

これだけ大量にいろいろなコンテンツが

あふれる世のなかではやむを得ないのだろうけど、

2,3分でわかった気になってしまう

こういうお手軽な解説は、

あんまり読んでは駄目だなと思ってしまう。

 

これはやはり再読するしかないだろう。

どんどん再読候補本が増える。

目が悪くなった60代としてはなかなか厳しい。

若者たちには、目のいいうちに

いっぱい本を読んでおくことをお薦めする。