子どもの頃、マンガが好きで、
小学生まで暇があればマンガを描いていた。
しかしどうしてだか、
登場人物の顔がことごとく左向きになってしまっていた。
左向きの顔はすらすら描けるのだが、
右向きの顔がうまく描けないのである。
あとから知ったことだが、マンガにおいて
左向きは未来を見る顔、
先に進もうとする気持ちが現れた顔。
右向きは過去に向かう顔、
止まったり振り返ったりするサインだという。
「さあ行こうぜ」と言う時は左向き。
「ちょっと待てよ」と言う時は右向きというわけ。
これは日本のマンガが右から左へとページを
めくっていくことと関連している。
マンガ家自身にそういう生理感が身についており、
この右向き・左向きの心のベクトルが
一種の「マンガ文法」になっている。
これは映画も同じで、画面で左を向いたら未来を見ている、
右を向いたら過去を見ている表現だという。
欧米には日本のようなマンガ文化はないが、
映画の場合は、演劇の生理に基づいていると思われる。
登場人物が上手(観客から向かって右)から
下手(同・左)へ動く時は未来へ向かう、
逆の場合は過去に向かうというのが基本形。
これは人間の脳のメカニズムと関連しているのだと思う。
自分の話に戻すと、
子どもの頃は過去時間の分量が少なかったから
右向きの顔が描けなかったのだろうか?
けれども今でもちょっと落書きで人間を書くと、
手が覚えているのか、正面でないときは、
無意識に左向きの顔を描いている。
いずれにしてもこのマンガ文法・映画文法を意識して
マンガや映画を観ると面白い。
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