週末の懐メロ125:夜空ノムコウ/スガ シカオ

 

3・10 東京大空襲

3・11東日本大震災

いや、少し調べれば、365日、世界中で

何かしらの悲劇が刻まれている。

べつに今日・明日だけが特別なわけではないが、

日本人にとって意識せざるをない日になっていることは確か。

 

しかし、あんな悲劇があっても、

地球はずっと回り続けるし、

世の中は止まることなく進んでいく。

当たり前のことだが、

これは多くの人にとっては救いとなり、

あの時点に取り残されてしまった人にとっては

残酷な事実となる。

 

そんなことをぼんやり考えていたら、

「夜空ノムコウ」を口ずさんでいた。

特にエンディング近く。

 

あのころの未来に 僕らは立っているのかなぁ…

全てが思うほど うまくはいかないみたいだ

このままどこまでも 日々は続いていくのかなぁ…

雲のない星空が マドの向こうに続いている

あれからぼくたちは 何かを信じてこれたかなぁ…

夜空のむこうには もう明日が待っている 

 

この曲は1998年にSMAPが歌って大ヒットした。

僕もSMAPの歌のなかでいちばん好きだ。

それにしても、つい最近の歌だと思っていたら、

リリースはなんと1998年!

もう四半世紀もむかし。20世紀のヒット曲。

この頃、僕はまだ30代だったのだ。

 

もともと恋の終わり、青春の終わりについて

歌ったものだと解釈されている。

SMAPの口あたりの良い甘い味付けだとそう聴こえるが、

詞を書いたスガ シカオのこのバージョンは、

思い切りビター、苦味を効かせた味付けで、

歌詞さえもまったく違うものに聴こえてくる。

 

そしてバックに響く打ち込み音と奇妙な電子ノイズ。

90年代風、世紀末風とでもいえばいいのか、

ひどく不気味で荒涼とした響きがある。

なんだか焼け野原になった東京の街や、

地震・津波・原発事故で失われた

あの被災地の風景を想起させる。

それでも日々は続いていく。

夜空のむこうには明日が待っているのだ。

 

スガ シカオがどんな意図でこの歌詞を書いたのか、

25年後の今となってはどうでもいい気がする。

「夜空ノムコウ」は、もうみんなの歌であり、

聴く人ひとりひとりが自分に寄せて

自由に解釈し、自由にイメージを広げて良い。

正しい意味・正しい聴き方など必要ない。

名曲とはそういうものではないか。

 

良いこと、嫌なこと、いろんな経験をしてきたし、

これからもしていくだろう。

これはその先の未来を生きていく僕たちが

自分自身の物語を紡ぐために口ずさむ歌なのだと思う。

 

おりべまことの音楽エッセイ