一昨年公開されたアンソニー・ホプキンス主演の
映画「ファーザー」は、認知症患者の視点で描かれている。
観客を混乱に陥れるような
ミステリアスでサスペンスフルな展開。
しかしその実、認知症患者と介護の現実を突きつける
ドキュメンタリータッチの映画でもある。
もともとは舞台劇で、舞台はロンドン。
派手なシーン展開は一切なく、
ドラマはほとんど家の中で進む。
それでも1時間半、画面から目が離せない。
目の前で何が起っていくのか、
ひとつひとつを固唾を飲んで見守らざるを得なくなる。
無駄なものを一切そぎ落としたシャープな演出と構成。
そして何よりもアンソニー・ホプキンスの圧倒的な演技力。
嘘っぽさがみじんもないリアルの極致。
こんなふうに認知症患者を演じられる役者が他にいるのか。
そして、その行く先は、やはり辛くて悲しい。
広告では「感動」と謳っているが、
いや、多くの人はそれよりも
言いようのない不安と怖さに晒されるのではないか。
そういう映画だと思う。
けれども認知症が蔓延していくこれからの社会、
現実と向き合いたくない人、逃げ出したい人も、
せめてこの映画で認知症のことを知ってほしい。
2021年アカデミー賞・主演男優賞と脚本賞。
現在、アマゾンプライム見放題で視聴可能。
認知症について学ぶ。
認知症から学ぶ。
認知症介護の日々を綴った
おりべまことの面白エッセイ集。
専門医の解説も併載。
「認知症のおかあさんといっしょ」
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