年末年始にかけて、NHKの画面は松本潤だらけ。
「どうする家康」の大量の番宣を投下し続けた。
それで第1回を見たが、松本潤の家康のヘタレぶりと
家臣らのキャラ(特に松重豊とイッセー尾形)が
面白かった。
それにしてもオープニングタイトルは、
まるで朝ドラみたいな軽やかな映像と音楽。
これだけでこのドラマは、
これまでの大河のような重厚な時代劇ではなく、
弱小企業の若いヘタレ後継ぎ
(あるいは窮地に追い込まれたスタートアップ)が奮闘して
業界を牛耳るヒーローに成りあがる物語であることが
わかる。
だから松潤(39)と似た世代(あるいはそれより若いの)が
自己投影しやすいように作られている。
大河ドラマとしては相当な違和感。
従来の大河ファンには到底受け入れられないだろう。
けれどもたぶん、それでいいのだと制作陣は思っている。
言い換えると、これまでの大河ファンは切り捨ててもいい、
とさえ割り切っているのではないかと想像する。
テレビがこれだけ若い世代に見られなくなっている現状
(にしても数百万、数千万人規模が見ているけど)
を考えると、
彼ら・彼女らに大河ドラマを見てもらうためには
これくらい思いきったことが必要なのだ、きっと。
大河の視聴者というのはどうもかなり保守的なようで、
「大河ドラマとはこうでなくては」みたいな
思い入れが強い。
あれだけ革新的で大好評であることが伝えられた
「鎌倉殿の13人」も視聴率は12%台で振るわなかった。
2019年の「いだてん」などは1ケタ。
三谷幸喜も宮藤官九郎も人気が高く、
腕も確かな素晴らしい脚本家だが、
大河ドラマの作者としてはあまり評価されないようだ。
何度もいろいろな変革を試みてきた大河ドラマだが、
数字を見る限りはうまくいっていない。
ということで、マスメディアでは、
かつて最高視聴率39.7%を記録した
「独眼竜正宗(1987年)」以下、
歴代の高視聴率作品(30%以上はすべて60年代~80年代)
と比べて、
最近の大河の視聴率の低さばかりをあげつらうが、
そんな懐メロ作品と今を比べてどうするのか?
幸い、NHKは民放ほど視聴率を気にせずに済むので、
大河の制作陣は余計なことを気にせず、
どんどん自分たちの信じるところを追究して、
良いドラマを作ってほしい。
これだけテレビで手間暇かけて丁寧なドラマ作り、
そして役者をやる気にさせる仕事ができるのは
大河ドラマを置いて他にないのではないかと思う。
経済が好調だった30年前の時代の幻想から
一歩も抜けだせない頭の固まった年寄りたちの
幻想の弊害はこんなところにも現れている。
こうした年寄りは皆切り捨てて、
若い者に照準を絞ったやり方は正解である。
しかも家康は歴史上の人物として、
数少ないハッピーエンドが可能な人物でもある。
若者――といってもベビーフェースの松潤ももう40、
ほとんど中年だ――にやる気・勇気を少しでも与え、
楽しめるドラマになればいいと思う。
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