イギリスで1978年に刊行された
レイモンド・ブリッグスの絵本
「スノーマン(ゆきだるま)」。
少年がクリスマスの夜に、
自分が作ったスノーマン(雪だるま)といっしょに
天上にあるサンタクロースの国へ遊びに行くという物語で、
それを原作に1982年にテレビアニメーションが作られた。
「ウォーキング・イン・ジ・エア(空を歩く)」は
その挿入歌で、少年とスノーマンが楽しく空を
散歩するシーンで流れるのだが、
なぜかとても悲しく切ないメロディ。
ラストシーンを暗喩しているのだろう。
夢はいつも切ない。
そして「スノーマン」という童話は、
実は別れや死をテーマにした物語なのだ。
作詞・作曲は、ハワード・ブレイク。
オリジナルの歌はセント・ポール大聖堂の
少年聖歌隊のメンバーだったピーター・オーティが歌った。
たくさんの人がカバーしているが、
ノルウェーのシンガーソングライター・
オーロラのカバーはそのなかで最も新しいものと思われる。
彼女は1996年生まれというから、
うちの息子と同い年だ。
息子がチビのときは今ごろの季節になると、
よくいっしょにスノーマンの本を読んだり、
アニメを観たりした。
彼女も同様にスノーマンの物語を愛して育ったのだろう。
スノーマンはまんまるで、イギリスでは
日本のドラえもんやアンパンマンのように
子供に愛される存在なのだ。
2013年にデビューしたオーロラは、
クリスマスシーズンになるとよく自分のライブや
テレビ番組で自分のレパートリーの一つにした
この歌をよく歌っているらしい。
しかし、彼女が歌うと
あのほのぼのしたスノーマンの世界とは
まるで別の、畏怖さえ感じる聖なる世界が広がる。
名前だけは知っていたが、
まともにオーロラを聴くのはこの曲が初めてだったので、
他にもいろいろYouTubeで聴いてみた。
「ランニング・ウィズ・ザ・ウルブズ」
「アイ・ウェント・ツー・ファー」
「アンダー・ザ・ウォーター」
「ソフト・ユニバース」
「ザ・リバー」etc・・・
完全に心臓をつかまれた。
とてつもなくユニークで、
とほうもなくイマジネーティブ。
40数年前に初めてケイト・ブッシュに
出逢った時に匹敵する衝撃度だ。
21世紀以降、これほど妄想力を刺激された
ミュージシャンはいない。
まさか2020年代にこんな音楽に出逢うとは!
一応、ジャンル分けとしてはエレクトロポップ
ということになっているようだが、
それよりもベースになっていると思われる
ケルト系・北欧系の民俗音楽の匂いに強く惹かれる。
曲によっては日本・アジア・
ネイティブアメリカンの香りも。
そして、ロックの精神をしっかり受け継いでいる。
ミュージックビデオも傑作ぞろいだ。
少なくとも僕にとっては現代最高のミュージシャン。
2022年はオーロラを発見した年として胸に刻んでおこう。
懐メロではないが、最高のお気に入り
「ランニング・ウィズ・ザ・ウルブズ」も同時UP。
ぜひ、オーロラの真髄を聴いてみてください。
コメントをお書きください