週末の懐メロ105:剣を棄てろ/ウィッシュボーン・アッシュ

 

1972年リリース。

1970年代に人気を誇ったウィッシュボーン・アッシュは、

最近、あまり語られることが少ない。

しかし、この曲がラストを飾る「百眼の巨人アーガス」は

必聴の名盤である。

逆に言えば、他は聴かなくていいので、

「アーガス」だけは聴いてほしい。

 

内容はレコードジャケットに表現された世界そのまま。

中世の戦士が彼方の空を見つめる。

その視線の先、霧に霞む山の向こうに

かすかに見え隠れするUFO。

過去と未来を繋ぐ、恐ろしくイマジネーティブな音楽が、

1曲目「時は昔」のギターのイントロから展開する。

 

ウイッシュボーン・アッシュは

一般的にはハードロックに分類されることが多いが、

彼らが最も輝いた、この「アーガス」の世界は、

プログレッシブ・ロックのノリである。

 

それもシンセサイザーなどのキーボードを使わず、

ツインリードギターとベース・ドラムの編成で

繰り出すサウンドは、シンプルで味わい深く、

他のプログレバンドにはない独特の美学がある。

 

このアルバムは、いわゆるコンセプトアルバムとは異なり、

特に一貫したストーリーや

明確なテーマがあるわけではない。

しかし、美しくユニークなジャケットにも表現された

統一された世界観は、

却って聴く者の心に、さまざまなストーリーを湧かせる。

 

そして、そのエンディング曲、

ツインギターの独特の哀愁を帯びた「剣を棄てろ」は、

当時の東西冷戦に対する反戦歌とも解釈できる。

 

剣を棄てろ

戦いは終わった

勝者も敗者もない。

闘争の怒りはただ漂流するだけ・・・・

 

50年の年月が経ち、

今また世界は同じ時・同じ道を巡っている。

いつか「剣を棄てる」時代は来るのだろうか。