1972年リリース。
1970年代に人気を誇ったウィッシュボーン・アッシュは、
最近、あまり語られることが少ない。
しかし、この曲がラストを飾る「百眼の巨人アーガス」は
必聴の名盤である。
逆に言えば、他は聴かなくていいので、
「アーガス」だけは聴いてほしい。
内容はレコードジャケットに表現された世界そのまま。
中世の戦士が彼方の空を見つめる。
その視線の先、霧に霞む山の向こうに
かすかに見え隠れするUFO。
過去と未来を繋ぐ、恐ろしくイマジネーティブな音楽が、
1曲目「時は昔」のギターのイントロから展開する。
ウイッシュボーン・アッシュは
一般的にはハードロックに分類されることが多いが、
彼らが最も輝いた、この「アーガス」の世界は、
プログレッシブ・ロックのノリである。
それもシンセサイザーなどのキーボードを使わず、
ツインリードギターとベース・ドラムの編成で
繰り出すサウンドは、シンプルで味わい深く、
他のプログレバンドにはない独特の美学がある。
このアルバムは、いわゆるコンセプトアルバムとは異なり、
特に一貫したストーリーや
明確なテーマがあるわけではない。
しかし、美しくユニークなジャケットにも表現された
統一された世界観は、
却って聴く者の心に、さまざまなストーリーを湧かせる。
そして、そのエンディング曲、
ツインギターの独特の哀愁を帯びた「剣を棄てろ」は、
当時の東西冷戦に対する反戦歌とも解釈できる。
剣を棄てろ
戦いは終わった
勝者も敗者もない。
闘争の怒りはただ漂流するだけ・・・・
50年の年月が経ち、
今また世界は同じ時・同じ道を巡っている。
いつか「剣を棄てる」時代は来るのだろうか。
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