週末の懐メロ103:自由に歩いて愛して/PYG(ピッグ)

 

1971年リリース。

アイドル感が強かった

1960年代終わりのGS(グループサウンズ)。

熱狂的なブームが終わり、

そのメンバーたちが集まって

「本格的なロックをやろうぜ」と作ったバンドが

PYG(ピッグ)だった。

 

ザ・タイガースから

ヴォーカル・沢田研二(ジュリー)と

べース・岸部修三(のちの一徳)。

 

ザ・テンプターズから

ヴォーカル・萩原健一(ショーケン)と

ドラムス・大口広司。

 

ザ・スパイダースからギター・井上堯之と

キーボード・大野克夫。

 

GSブームの頃、おとなたちは

「なんだ、あの女オトコどもは!」と怒っていた。

年上のいとこのお姉ちゃんたちは

ジュリーにキャーキャー言ってた。

いとこの兄ちゃんからは

「ショーケンは子どもの頃、

よくおねしょをしてたから

ショーケン(小便+健一)っていうんだって」

と教わった。

 

僕はまるっきり子供(小学校低学年)だったので、

髪の長い兄ちゃんたちがワイワイ歌を歌っているな、

でもエレキギター弾けるとカッコいいな、

という印象だった。

 

ワイワイ、アイドル扱いされていたGSも

あっという間に消費されてしまって、

ロックかぶれの先輩がたは

「あんなの、オンナ相手の子供だましバンドだ」と

馬鹿にしていた。

 

けれども、彼らの音楽性と演奏力は

優れたものだった。

PYGがそれを証明した。

注目されたのは、もちろん超人気アイドル、

ジュリーとショーケンのダブルヴォーカルだが、

バックの4人がすごかった。

彼らはのちに井上堯之バンドとなり、

日本のロック・ポップの世界に金字塔を打ち立てる。

 

井上堯之バンドの代名詞となる

「太陽にほえろ!」のテーマも、

最初はPYGの名義で演奏されたらしい。

 

「自由に歩いて愛して」は、

デビュー曲「花・太陽・雨」に続く

セカンドシングル。

どうやって手に入れたのか憶えてないが、

僕もレコードを持っていて、よく聴いていた。

 

まさしくあの井上堯之バンドのロックサウンドが

ここにある。

詞も素敵で、50年後のいま聴いても、

いや、いま聴くからこそ心に刺さるものがある。

 

これだけのスーパーバンドでありながら、

PYGは不遇で、当時のロック=反体制の信奉者から

商業主義バンドと罵倒されたり、

コンサート会場ではジュリーファンと

ショーケンファンの対立が激しく、

一体化できなかった。

所属事務所のマネージメントもよくなかったらしい。

 

思ったほどレコードは売れず、

マスコミからは見掛け倒しと叩かれ、

結局、鳴かず飛ばずで終わってしまった。

 

しかし、PYGで自分たちの音楽、

本格的なロックを追究したからこそ

メンバーたちのその後の輝かしいキャリアが

築かれた。

 

ドライブ感満点のベースを弾いていた岸部修三も

岸部一徳という存在感抜群の俳優となって今も活躍。

ジュリーもショーケンも歌手・俳優の両面で成功。

二人とも自分のライブでは愛と誇りを持って

この「自由に歩いて愛して」を歌っていた。

 

うん、やっぱりカッコいい!

もうこのメンバーのうち、

半分の三人がこの世を去ってしまったが、

PYGよ、永遠なれ。

 

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