週末の懐メロ102:去りゆく恋人/キャロル・キング

 

1971年リリース。

この曲が収録されたアルバム

「つづれおり」(Tapestry )は、

全米アルバムチャートで15週連続1位、

その後も302週連続でトップ100に留まる

ロングセラーとなり、

グラミー賞でも4部門を制覇した。

 

それだけでなく、現在も聴かれ続ける

ポップミュージックの名盤中の名盤として名高い。

この四半世紀、ローリングストーン誌などをはじめ、

いろいろな音楽雑誌やサイトなどで

何度もロック・ポップス名盤ランキングが

開催されているが、いわゆる一般的なランキングで、

「つづれおり」はつねに十傑に入っている

という印象がある。

それだけ多くの人に、

世代を超えて訴える普遍性があるということだ。

 

キャロル・キングは1960年代、

弱冠16歳からプロの音楽家として活動している。

今回、知ってびっくりしたのは

「ロコモーション」をはじめ、

今でも有名なR&B系のスタンダードナンバーの多くが

彼女の手によって書かれたということ。

 

最初の夫となったジェリー・ゴフィンとコンビを組んで、

ソングライターとして全米ヒットを連発していたのである。

ビートルズのレノン=マッカトニーも、

最初はゴフィン=キングを目指していたという

逸話さえあるようだ。

 

そんな彼女が夫とのコンビを解消して、

今度は自らシンガーソングライターとして活動を始めて

2枚目のアルバムが「つづれおり」だった。

このアルバムが後世のミュージシャンに与えた影響は

計り知れない。

そして、もしかしたらその影響力は

日本の女性ミュージシャンたちに

最も大きく及んだのではないかと思える。

 

彼女の作曲の素晴らしさ、アルバムの充実度に加えて、

ジャケット写真がとても印象的だった。

 

日の当たる窓際で、猫といっしょに

セーターとジーンズ姿でたたずむキングの姿は、

「自由な新しい女」として、一つの世界を、

これからのライフスタイルを提示していた。

それもジャニス・ジョプリンのような

常人離れした激しすぎる生き方でなく、

愛情と平和と穏やかさを伴った、日常の中の新しい人生を。

 

事実、キングは五輪真弓のアルバム制作にも関わっており、

日本の音楽界とも縁が深い。

もしも彼女がいなかったら、

そして「つづれおり」というアルバムがなかったら、

日本でこれほどフォークソングも、

ニューミュージックも

発展しなかったのでないかと思えるくらいだ。

 

僕自身は正直、

これまでキャロル・キングにあまり興味がなく、

昔、ラジオでときどき聴いたな~くらいの印象だった。

 

僕が音楽をよく聴き始めた中学生時代—ー

1970年代の半ばには、すでに彼女はレジェンドであり、

当時の変化の激しい音楽界において、

過去の人になっていた感がある。

 

そんなわけで最近、改めて聴いてみたら、

たしかにこれだけいろいろな音楽を聴いた耳にも

「つづれおり」の楽曲群は新鮮に響く。

これはやはり現代のポップスのバイブルと言える

アルバムなのだ。

 

中でもいちばん好きなのが「去りゆく恋人」である。

この曲は中高生時代、女性のDJの

「秋になるとキャロル・キングが聴きたくなるんです」

というセリフとともに、

ラジオで何度か耳にしたことをよく憶えている。

 

BBCに、これまた当時、

シンガーソングライターとして大活躍していた

盟友ジェームス・テイラーと共演したライブ。

若くして素晴らしい貫禄。

そして、心に染みわたる「自由な新しい女」の歌声。