スマホ頭の骸骨に「かごめかごめ」をされている、
花束を持った子ども。
その子を鳥や動物たちが見つめている。
漫画家・五十嵐大介が描いた
奇怪でありながらユーモラスなイラストの表紙は、
現在の僕たちの姿であるように思える。
「死から問うテクノロジーと社会」という
ものものしいサブタイトルがついているが、
中身はとてもポップでバラエティ豊かな内容で、
けっして難解な研究書の類ではない。
今月8日まで二子玉川で開かれているEND展は、
昨年11月に六本木のアートスペースで行われた、
このサブタイトルと同名の展覧会をベースに、
少しアレンジを加えたものだ。
キュレーターの塚田有那さんの話によると、
私たちが今見ている世界・社会とはどういうものなのか、
誰にもいつか必ず訪れる「死」から
問いかけていくことはできないか?
という発想から展示のアイデアが生まれたという。
END展とこの本の内容は密接にリンクしており、
フクロウみたいな不思議な鳥のポスターも、
この本の冒頭に入っている五十嵐大介・作の
「遠野物語より」を転用している。
「遠野物語」は民俗学者・柳田国男の作品で、
民俗学、さらに広く言えば文化人類学を
日本に根付かせた名著だが、
これを現代風の漫画にアレンジして
トップにに持ってきたことが
この本の性格(=END展の性格)を表している。
塚田さんは責任編集者でもあり、
まえがきの最後にこう書いている。
本書では、民俗学や人類学、
情報社会学や人工知能研究まで、
さまざまな識者の方々に寄稿や対談、
インタビューにご協力いただき、死をテーマに
それぞれの視点から論じていただいた。
テクノロジーがいやでも絡み合う現代において、
いま一度、生と死という永遠の連鎖に思考を委ねるとき、
これからの社会を見据える
新たな視座が見つかれば幸いである。
冒頭だけでなく、章の合間合間に
短編マンガが入っていることも特徴で、
これもEND展で活かされている。
その一つ、「うめ」というユニットによる
「ようこそ!わたしの葬儀へ!」は、
8頁ほどの話だが、某世界的IT企業のCEO
(GAFAのカリスマ経営者みたいなイメージ)の
葬儀を描いたものだが、
現代的・近未来的な死と葬儀の
エッセンスを詰め込んだ傑作で、
「死後、個人データを合成してバーチャル上に
復活できるとしたらしたいですか?」とか、
「もし死者とVR上で会えるとしたら会いたいですか?」
とか、
「過去の偉人の知性や人格をAIで復活させて
国を統治できるとしたら賛成ですか?」とか、
けっこうラディカルな質問に対する
回答データも盛り込まれている。
(この本の制作集団 HITE-Mediaの
独自に行ったアンケート調査にもとづくもの)
このまま何となく齢を取って、
漫然とくたばるのは嫌だと思っている人、
また、未来はどうなるのだろう、
子どもたちはどんな社会を生きるのだろうと
考えている人は、
「END展」を観たり、
「RE-END」を読むことは
自分の思考や行動を変える
大きなきっかけになるかもしれない。
電子書籍「世界のEnding Watch」
人間はいつの時代も死がもたらす恐怖や悲しみ・寂しさを様々なやり方で克服しようとしてきた。
世界中にある葬儀供養の文化・風習はその集積だ。しかし近年、先進国ではそれが急激に変化している。世界の死の昔と今を俯瞰しながら楽しむエッセイ集。
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