現代を生きる人間、
少なくとも都市環境の中、現代文明の中で生きる人間は、
脳だけは生身のままだが、体のその他の部分も、
住環境も「技術=テクノロジー」に頼っている。
当然、あなたも僕も例外ではない。
これは世界的なロボット工学者の石黒浩教授の思想である。
石黒教授によれば
「人間とは、動物と技術を合わせたものである」。
住んでいる家やビルはもちろん技術の賜物であり、
都市部において、人間の手がまったく入っていない
純粋な自然を見つけることは、ほぼ不可能だ。
体だって工場で作られた服を着て、
メガネをかけて、常にスマホをいじっている。
内部に人工臓器を入れている人も珍しくない。
人間の活動はすでにその大半が
技術によって支えられている。
(「ロボットと人間」/岩波新書より)
「人間とは何か」を追求するために
さまざまなロボット・アンドロイドを開発し、
実証実験・演劇・パフォーマンスを通して
世に問い続ける石黒教授の考え方には、
非常に多くの共感と納得感を覚える。
彼のロボット研究(=人間研究)の世界には
未来の人間・社会の在り方が
かなり濃厚なイメージで潜在している。
人間は未来において、より進化するために、
価値観の多様性を広げ、
その身体機能や脳の機能を拡張する。
それを実現するために必要とされる、さらなる技術。
社会生活においても、
個人の生活においても、
AI・ロボットの協力はますます求められ、
僕たちはそれと共存していくことを余儀なくされる。
「純粋な人間でありたい」という
センチメンタルな感情のかけらが疼くかもしれない。
そんなものはとっくの昔に失っていることは
わかっているのだけど。
AI・ロボットは思いもかけなかった時空に
人間を連れて行ってくれるだろう。
その頃、まだしつこく生きていたら、
そして感傷的になるのを堪えることができたら、
僕もいっしょに連れて行ってくれるだろうか?
おりべまことのロボット小説・エッセイ集
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