1982年リリース。
キング・クリムゾン、ロキシー・ミュージック、
ユーライア・ヒープ、U.K.、そしてエイジア。
1970年代から80年代にかけて、
イギリスのプログレッシブ・ロックバンドを渡り歩いた
ベーシスト/ヴォーカリスト/ソングライターの
ジョン・ウェットンがこの世を去ってもう5年が経つ。
イエスのスティーブ・ハウ(ギター)、
ELPのカール・パーマー(ドラムス)、
バグルスのジェフ・ダウンズ(キーボード)らと組んだ
最強のバンド、エイジアは
ウェットンのそうそうたるキャリアの頂点だった。
「放浪者」「堕落天使」「夜を支配する人」などで
落ち着いたヴォーカルを聴かせながら、
ぶっといベースをブンブン唸らせるウェットン。
彼が大活躍した1973年から74年の
第3期クリムゾンは今でも大好きである。
しかも、脊髄をひん曲げるほどの
強烈にダークでアヴァンギャルドな音楽をやりながら、
映画俳優のような生粋の二枚目。
半世紀を経て第3期クリムゾンが
ますます神格化されているのは、
メンバーの才能、楽曲の素晴らしさはもちろんだが、
若きジョン・ウェットンと
デビッド・クロス(バイオリン/キーボード)が
アイドルバンド並みのイケメンだったことも
一因ではないかと思う。
70年代後半のU.K.ではエディ・ジョブソンや
ビル・ブラッフォードなどと組んで
「クリムゾン再来を目指した」などと言われていたが、
2枚目のアルバムでは、
もうエイジアと共通するポップ指向が見て取れた。
おそらく彼はクリムゾンを超えるほどの
サウンドを作るのは不可能だと感じ、
プログレを卒業しようとしていたのだと思う。
エイジアは結成時、スーパーバンドの呼び声が高く、
70年代のプログレ四天王を超越する音楽が
期待されていたが、
そのあまりにポップな楽曲群に
プログレファンは大きく裏切られた。
1980年代、プログレの黄金時代はとっくに終焉し、
ウェットン等は新たな境地を目指していた。
彼らの新たなチャレンジは見事、功を奏し、
この「ヒート・オブ・ザ・モーメント」がトップを飾る
デビューアルバム『詠時感〜時へのロマン』は、
全米ビルボード・チャートで第1位を9週間獲得。
年間アルバム・チャートでもNo.1に輝いた
大ヒット作であり、
1980年代を代表するロックナンバーになった。
しかし、売れたせいでエイジアへの風当たりは
より強くなった。
その後、節操なくメンバーチェンジを繰り返したため、
ヒット狙いの寄せ集め産業バンドとも揶揄された。
なんと創始者であり、リーダーであるはずのウェットンも
一時期離脱してしまっていたくらいだ。
それでもエイジアのサウンドのカッコよさは
誰もが認めるところだろう。
僕もこの曲を聴くと、がんがんテンションが上がり、
エネルギーが湧いてくる。
映像はウェットンが復帰した代わりに
スティーブ・ハウが抜けた
1985年あたりのものだと思われる。
ハウがいなけりゃエイジアじゃないという声もあるが、
僕にとってはウェットンさえいればエイジアだ。
それに僕の知る限り、
メンバーがみんな楽しく生き生きしている
このライブ映像は、この曲のベストパフォーマンス。
疾走するギターとキーボードをぶっとく支える
ウェットンのベースランニングが何よりも素晴らしい。
改めて、ぼくの人生を変えた
プログレッシブロック最高のスター、
ジョン・ウェットンの冥福を祈りたい。
コメントをお書きください