1989年リリース。
絶頂期のユーミンが生んだ奇跡の一曲。
むかしは運命の人に出会えた恋愛、
そして結婚の歌なのだと、
当たり前のように思っていたが、
いま聴くとかなりニュアンスが違う。
「ひとり残されても」
「いつか会えなくなる」
「思い出列車に乗る」
歌詞の中に出てくるこれらの言葉には
死の香りが漂っている。
「ひこうき雲」が、
飛び降り自殺をした友人を思って
書いた歌というのは、ほぼ定説になっている。
命とか魂といったものに対する意識が
彼女の音楽の源泉にあるのではないかと考える。
他にも「ベルベットイースター」
「翳りゆく部屋」など、
荒井由実時代の傑作は、
死のベールをまとった、
それゆえに不思議な透明感が印象深い作品になっている。
どうやら「アニバーサリー」も
その系譜に連なっているようだ。
80年代以降、都市に暮らす大人の恋愛を
お洒落に、華やかに歌ってきた彼女がたどり着いた、
一つの終着点のようにも思える。
このプロモーションビデオは今回初めて見たが、
誰もいない地球、すべてが終わった世界に
ひとり残された松任谷由実が
海岸や砂漠や草原をでさまよいながら
ほとんどスッピンで普段着で、
孤独に歌っている。
世界の果て、人生の果てを
たったひとりで歩いて行った――
30代半ばの彼女の自然な心象風景なのだろう。
その姿からは数多のイメージが流れ出し、
ひどく感情を揺さぶられる。
名曲ぞろいのレパートリーの中でも、
おそらく最も多くの人に、
最も長く聴き継がれる曲の一つになるであろう
「記念日」の刻印。
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