「サピエンス全史」「ホモ・デウス」の
ユヴァル・ノア・ハラリ氏が、
英国のガーディアン紙上で、
また、YouTubeにおいても、
ロシア・プーチン大統領の敗北を宣言している。
ハラリ氏は世界的な歴史学者、哲学者、
そしてベストセラー作家だが、
彼のこの宣言で世界の情勢が変わるわけではない。
それでも深く共感できる人は多いのではないだろうか。
もちろんロシアはウクライナとの戦争で負けたわけではない。
それどころか依然優勢なのだが、
ハラリ氏が言いたいのは、
大国・独裁者の横暴を、世界中のかなりの数のサピエンスたちが
許せない精神状態になっている、
そして未来に対して非常な危機感を抱いている、
という趣旨だ。
ロシアの勝利=大国の小国への侵略成功は、
世界を1945年(第2次世界大戦終結時)より以前に
逆行させてしまうことになる。
1945年以前、多くの国にとって、国を豊かにするために
戦争は一種の必要アイテムだった。
国家予算の半分以上を軍事費に使うのが
当たり前だった時代。
それがロシアの勝利・成功によって帰ってくる。
つまり、この77年間の経済・産業の発展、
いろいろな文化の成熟の歴史が
完全否定されてしまうことになる。
そんな時代の再来を、あなたも僕も、
多くのサピエンスたちは望んでいない。
心の底から嫌がっている。
ゼレンスキー大統領は、
そのあたりの心理をうまく読み取って、
巧みに情報戦を展開し、ウクライナを有利な方向に導いた。
僕も情報戦・認知戦ではウクライナが
ロシアを圧倒していると思う。
そうした世界(といっても西側諸国だが)の
「戦争・侵略は許せない」――ハラリ氏の言葉に変えれば、
「ジャングルに戻りたくない」という心情が、
ロシアの国民を動かせるかが問題になると思う。
あと、YouTubeの話の中では、
ドイツに対する提言が興味深い。
ナチスが犯した戦争犯罪の贖罪として、
ドイツがより積極的に動くことを、
イスラエル人(ユダヤ人)の立場から訴えている。
かつてのドイツの同盟国であり、
アジアで侵略行為を行った日本はどう動くべきだろうか?
今のこの世界が素晴らしく幸福であるとは思わないし、
この戦争の陰には、アメリカをはじめとする
西側諸国の陰謀が渦巻いているのだろうとは考えられるが、
それでも今の世界は、
1945年以前より、はるかに良くなっていると思う。
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