あの3・11から11年。
亡くなった人の冥福を祈る。
ただ、地震・津波は人間の力でどうにもできない自然災害。
それに対して福島第一原発の事故は完全な人災だ。
「原子力はがつくる明るい未来」という
戦後日本が掲げてきた輝ける看板は
木っ端みじんになり、
あの地域の人々は故郷を失った。
その惨状を20数年前に予言したかのような偉人、
忌野清志郎。
「サマータイム・ブルース」は
1988年、彼のバンド、RCサクセションとして
リリースしたアルバム「カヴァーズ」の1曲。
その名の通り、1950年代・60年代の
名曲カヴァーを収めたアルバムで、
オリジナルはアメリカのロカビリー歌手、
エディー・コクランの歌。
それを忌野が日本の原発の在り方を告発する歌詞をつけ、
反原発ソングとして作り変えた。
この少し前の1986年4月、
当時のソ連(現ウクライナ)の
チェルノブイリ原発事故が発生。
以降、日本でも一時期、原発の安全性が取りざたされた。
3・11の福島第一原発以前にも
小規模・中規模の事故はいくつかあった。
でも、この後、バブル景気になって、みんなすぐに忘れた。
僕もすっかり忘れた。
忌野清志郎はこのほかにも、
プレスリーの「ラブ・ミー・テンダー」や
タイマーズとして「原発音頭」を歌って反原発を唱えたが、
時が経つうち、これらは彼のキャリアの
ちょっとおかしな番外編として
隅っこに置かれたような印象がある。
でも今、改めて聴くとすごい。
ユーモアとエンターテインメント性にあふれた告発は、
誰にもまねできない反骨精神あふれるパフォーマンスだ。
だから、もし彼があの3・11の惨状を目の当たりにしたら、
いったいどんな歌を・・・と、どうしても考えてしまう。
ロシアとウクライナの戦争が勃発し、
チェルノブイリ原発がロシア軍に制圧されたという。
次々と攻撃され、制圧されていくウクライナの原発。
久しぶりに「核」という言葉が切迫感を持って
毎日にように飛び交っている。
そして、また考えてしまう。
もし彼がこの世界の現状を目の当たりにしたら、
いったいどんな歌を・・・と。
2009年に亡くなってもう13年になる。
生きていれば今年で71。
ロックンロールにゃトシかも知れないけど、
死ぬにはちょいと若すぎたぜ、清志郎。
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