1971年リリース。
マクドナルド&ジャイルズの叙情溢れる
プログレッシブ・フォークロックの佳曲。
2人はキング・クリムゾンのオリジナルメンバーで、
イアン・マクドナルドはフルートなどの管楽器や
キーボード群担当のマルチプレイヤー、
マイケル・ジャイルズはドラマーである。
今月9日、そのイアン・マクドナルドが76歳で亡くなった。
キング・クリムゾンはギタリスト
ロバート・フリップのバンドとして認識されているが、
デビュー作であり、後世に語り継がれる歴史的名盤となった
「クリムゾン・キングの宮殿」で
音楽的イニシアティブを執っていたのは、
フリップよりもマクドナルドだった。
彼はアルバム全5曲、すべての作曲に携わり、
中でも「風に語りて」と「クリムゾンキングの宮殿」は
マクドナルド単独の作曲
(作詞はピート・シンフィールド)である。
初期クリムゾンの音楽は、凄まじい狂気性・暴力性と
それに相反する優しさ・抒情性との絶妙なバランスで
成り立っていた。
その優しさ・抒情性のパートを担っていたのが、
イアン・マクドナルドの多彩な才能と
抜群の音楽センスだった。
「クリムゾン・キングの宮殿」は大成功したが、
当時、全員、20代半ばの若者だったメンバーらは、
その成功にしがみつくことなく、
新たな地平へ向かっていく。
ベース&ヴォーカルのグレッグ・レイクは、
キース・エマーソンに誘われ、ELP結成のために脱退。
マクドナルドとジャイルズは、このユニットを結成し、
自分たちの音楽を追求すべく脱退。
その後は残されたロバート・フリップが
「21世紀の精神異常者」の路線を追求して、
クリムゾンを狂気と暴力性を強調した
バンドに発展させていく。
それでもマクドナルドが創った
「叙情クリムゾン」のカラーを
捨て去ることは難しく、
後年もジョン・ウェットンや
デビッド・クロスの助けを借りて
「放浪者」「夜を支配する人」「堕落天使」など、
代表曲となる美しい楽曲群を生みだしていった。
「マクドナルド&ジャイルズ」は
美しい水彩画のような楽曲が揃った、
今聴いてもとても味わい深いアルバムだが、
キング・クリムゾンやELPに比べると
インパクトが弱いのは否めない。
ただ、その分、とても聴きやすく、
クリムゾンやELPのようなアグレッシブな音楽に
アレルギー反応を起こす人には、ぜひ聴いてみてほしい、
プログレッシブロックのアナザーワールドだ。
「アイビスの飛行」は、
そんなマクドナルド&ジャイルズの個性を味わうのに
最適な珠玉のバラード。
美しいメロディーと、
それに絡みつくような独特のドラムスが
とても印象的だ。
1960年代と70年代の狭間でロックを変革した寵児・
イアン・マクドナルドの冥福を祈る。
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