週末の懐メロ69:だれかが風の中で/上條恒彦&小室等

 

1972年、フジテレビ放映のドラマ「木枯し紋次郎」の

主題歌としてリリースされた。

かの市川崑監督が描く時代劇で、

「市川崑劇場」と銘打っていた。

 

故郷の村が盗賊に襲われて家族が皆殺しになり、

一人生き残った。

確かそんなといった設定だったと思うが、

とにかく紋次郎は天涯孤独の男となり、

上州(群馬県あたり)を旅して回る。

 

「あっしには関りにないことでござんす」と言いつつも、

行く先々でトラブルに巻き込まれ、

悪党どもとチャンバラをする羽目になる。

 

件のニヒルなセリフと口にくわえた長い楊枝、

そして編み笠と旅合羽がトレードマークで、

アホなガキども(自分を含む)が

紋次郎のマネをして遊んでいた。

 

正直、ドラマはあまりまともに観たことがなく、

したがって大して思入れはないのだが、

この主題歌はいい曲だなぁと思って

レコードを買って持っていた。

 

上條恒彦はこのちょっと前、ギターを弾いている小室等と

「六文銭(ろくもんせん)」という

バンドを組んで活動していた。

 

六文銭の音楽は一応、フォークソングとして

カテゴライズされていたと思うが、

フォークやロックとは一線を画す、

もちろん歌謡曲とも違う独特の存在、

そして上條の圧倒的な歌唱力は子ども心にも衝撃的だった。

 

二人ともすっかりじいさんになってしまったが、

この曲は今聴いても、体の奥底から血がたぎってくる。

 

小室等のギターは優しく美しく響き、

上条恒彦は力強さを保ちながらも、

齢を取った男の味わい深い声で、

この歌の持つ内側のドラマを描き出す。

 

バックの演奏もオーケストラではなく、

ギターとピアノを立たせた小編成バンドで、

アレンジでとても新鮮だ。

2022年になっても、この先まで行っても、

きっとまだ、誰かが風の中で待っている。

 


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コメント: 1
  • #1

    クロヒツジ (水曜日, 20 9月 2023 01:25)

    小学校の卒業式の唄選びで、
    この曲を歌いたいと言った女の子がいて、
    先生が歌ってみろと女の子が試された。
    彼女は席を立ち深呼吸して、
    アカペラでワンコース歌った。圧巻。

    結局歌は他の当たり障りの無いやつになったけど、
    私の卒業式ソングは彼女のアカペラのこの曲。
    リアル世代なんで51年前(笑)
    広島県呉市のある小学校の出来事。