自由奔放に明るく跳ね回るピアノの旋律。
およそ40年ぶりに聴いたこの曲は、
ナイフのようにズブリと胸の奥深くまで入り、
いろいろな感情が噴き出してきて、不覚にも涙した。
八百屋のみいちゃん、お医者さんちのあっこちゃん、
甘ったれのふうちゃん、鼻ったれのかずちゃんたちは
今どうしているのだろう?
歌う矢野顕子も、聴く自分も
ずいぶん齢を取った。
だからこそこの「おとなの童謡」の真髄が響く。
1980年リリース。
同名の2枚組アルバムは確かその次の年くらいに
中古レコード屋で手に入れて持っていた。
矢野顕子は1979~80年に行なわれた
YMO(イエローマジックオーケストラ)の
ワールドツアーにサポートメンバーとして帯同し、
時にはYMOを食ってしまうぐらい
大活躍していた。
その帰国直後に作られたこのアルバムでは、
YMOの3人——
細野晴臣、高橋幸宏、坂本龍一が全面的にバックを務め、
テクノポップっぽいサウンドになっていた。
アルバムのハイライトになっていた
この表題曲もオリジナルはテクノ歌謡みたいな感じで、
それはそれで面白ったのだが、
このピアノバージョンは格別の味わいと深みがある。
義なるものの上にも 不義なるものの上にも
静かに夜は来る みんなの上に来る
いい人の上にも 悪い人の上にも
静かに夜は来る みんなの上に来る
こんな歌詞を軽やかなピアノに乗せて、
こんな童謡のような歌にできる
矢野顕子という音楽の女神を愛さずにはいられない。
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