週末の懐メロ68:ごはんができたよ/矢野顕子

 

自由奔放に明るく跳ね回るピアノの旋律。

およそ40年ぶりに聴いたこの曲は、

ナイフのようにズブリと胸の奥深くまで入り、

いろいろな感情が噴き出してきて、不覚にも涙した。

 

八百屋のみいちゃん、お医者さんちのあっこちゃん、

甘ったれのふうちゃん、鼻ったれのかずちゃんたちは

今どうしているのだろう?

 

歌う矢野顕子も、聴く自分も

ずいぶん齢を取った。

だからこそこの「おとなの童謡」の真髄が響く。

 

1980年リリース。

同名の2枚組アルバムは確かその次の年くらいに

中古レコード屋で手に入れて持っていた。

 

矢野顕子は1979~80年に行なわれた

YMO(イエローマジックオーケストラ)の

ワールドツアーにサポートメンバーとして帯同し、

時にはYMOを食ってしまうぐらい

大活躍していた。

 

その帰国直後に作られたこのアルバムでは、

YMOの3人——

細野晴臣、高橋幸宏、坂本龍一が全面的にバックを務め、

テクノポップっぽいサウンドになっていた。

 

アルバムのハイライトになっていた

この表題曲もオリジナルはテクノ歌謡みたいな感じで、

それはそれで面白ったのだが、

このピアノバージョンは格別の味わいと深みがある。

 

義なるものの上にも 不義なるものの上にも

静かに夜は来る みんなの上に来る

いい人の上にも 悪い人の上にも

静かに夜は来る みんなの上に来る

 

こんな歌詞を軽やかなピアノに乗せて、

こんな童謡のような歌にできる

矢野顕子という音楽の女神を愛さずにはいられない。