都内某メジャー書店で2021年、
ビジネス部門・思想書部門でよく売れたのは、
マイケル・サンデル教授の
「実力も運のうち 能力主義は正義か? 」
斎藤 幸平「人新世の資本論」
ルドガー・ブレグマン「希望の歴史」
プレジデント社の「独学大全」といったところらしい。
また、この数年間、着実な売上を示しているのが
ハンス・ロリングの「ファクトフルネス
10の思い込みを乗り越え、
データを基に世界を正しく見る習慣」
一般ピープルが抱く
資本主義社会に対する不信と反感、
その将来性に対する疑念と不安、
自分でなんとかしなくては、みたいな心持ちが
反映されているのかもしれない。
日常の生活レベルではともかく、
社会・世界・人生といったマクロな視点では
ネット情報はあてにならない。
そこはやっぱりちゃんと本を読まないと、
ということになるのだろう。
そんな話を息子としていた。
正月、来なかった息子が昨日・一昨日と遊びに来た。
自転車で20分くらいのところに住んでいるが、
年に2~3回しか来ない。
何をするでもなく、メシ食ってフロ入って、
くっちゃべって帰っていくだけだが、
やっぱり会うと何となく落ち着いて、
やっと正月終わった感になった。
こやつが上記某書店に勤めていて、
いろいろ本屋の舞台裏の話を聞けて面白い。
とある宗教家の本がベストセラーになっていると思ったら、
信者の人がそれぞれ一人100冊買いに来ていた、とか。
書店もネットの進化で電子書籍なども出ているし、
加えてこの2年はコロナの影響でさぞ苦戦しているだろう、
もしや正月来なかったのは、会社が経営不振で
リストラされたのではと、一瞬、心配したのだが、
そういうことはまったくなく、
逆にネット通販が充実したことによって、
むしろ売り上げは伸びているという。
やはりそこは老舗ブランド大型店の強み。
日本の出版文化の一翼を担う書店
と言っても過言でないので、
顧客の厚みが違う。信頼感が違う。
一般には売れない専門書もたくさん扱っているし、
図書館並みのレファレンス力もある。
売れ筋本しか置かない(置けない)、
いわゆる町の本屋さんには
到底真似できない所業ができる。
本屋も両極化が進んでいるようだ。
町の本屋さんには個性で勝負してもらうしかない。
息子とそんな話をするのはなかなか楽しかった。
「ところで、おれ読んでないけど、
村上春樹の『ドライブ・マイ・カー』ってどんな話?」
と聞かれて思い出そうとしたが、
ぜんぜん思い出せなかった。
たしか5~6年ほど前の短編集に
入っていたので読んだはず。
同じビートルズの曲のタイトルの「イエスタディ」は
関西弁のやり取りが面白くて
ぼんやり覚えていたのだが・・・。
映画化されてゴールデングラブ賞を
受賞するほどの話だっけ?
という印象。
カンヌ映画祭では脚本賞を取ったというから、
原作とはまた別物と考えた方がいいのだろう。
それでも「原作:村上春樹」の名は燦然と世界に輝く。
また一つ勲章が付いた。
一昨年の短編集「一人称単数」は
あんまり面白くなかったし、
世間の評価も高くなかったけど、
雑誌は村上春樹特集をやると売上が跳ね上がるという。
今回の映画で再び株が上がることは間違いなし。
日本の文学界は、まだまだハルキ頼りのようだ。
というわけで息子はもちとイチゴをお土産に帰って行った。
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