もうすぐ冬至(12月22日)ということもあり「長い夜」。
1970年発表。シカゴの大ヒット曲だ。
最初は彼らの音楽そのものより
バンド名のロゴがカッコいいと思っていた。
シカゴ、カーペンターズ、コカ・コーラ。
Cで始まるグニャグニャっとした感じの
アメリカンなロゴはどれも好きで、
当時の「輝けるアメリカ」を象徴していた。
僕の先輩方やあの頃の大人たち、
要するに日本人の大半がアメリカに憧れ、
アメリカにコンプレックスを抱いていた時代の話だ。
ロック狂いの先輩にこの曲を初めて聴かされたのは、
確か小6の時だったと思うが、
僕にとってシカゴは、父親のイメージと結びついている。
「ちょっとシカゴに行ってくる」は父の口癖だった。
いや、アメリカと貿易をしていたとか、
イリノイ州のあのギャングシティに
何か買い付けに行ってたとか、そんな話ではない。
うちの親父は鵜屋根瓦をふせ換える職人で、
肉体労働者だ。
労働者の休日のお楽しみは、ささやかなギャンブルだ。
シカゴと言うのは当時、
うちの近所にあったパチンコ屋の名前である。
仕事が休みで暇なときは、
いつもそのパチンコ屋に通っていたのだ。
チビの時はそのパチンコ屋に連れて行ってもらうだけでも
嬉しかった。
印象的には勝ち負け半々。
勝った時はチョコレートを取ってくれたし、
負けても喫茶店に行って何かおごってくれた。
今でもあの店の床に塗ったワックスの油臭さと
タバコの煙が入り混じったにおいを憶えている。
今日は父の命日なので、そんなことを思い出してしまった。
だけど皮肉なもので、音楽をよく聴くようになってから、
あのパチンコ屋の密閉空間に響く
チンジャラジャラという騒音が
年を取るにしたがって、
だんだん耐え難いものになっていった。
もう40年近く、パチンコ屋には足を踏みいれていない。
そんなわけでビッグシティの名を冠した
ロックバンド「シカゴ」は、
そのカッコいいロゴとは相反する、
日本の庶民のケチ臭い娯楽のイメージをまとっていて、
イマイチ印象が良くなかった。
最近もあまり取り上げられることが少ないようだが、
よく聴くと、なかなか良い曲が揃っているし、
60~70年代バンドらしく、メッセージ性も高い。
「長い夜」はそんなシカゴの代表曲で、
リードギタリスト、テリー・キャスのギターソロを
フィーチャーしている。
そう言えば、こんなに長いギターソロを聴いたのも
シカゴのこの曲が初めてだ。
テリー・キャスがギターを弾く姿は、
お世辞にもそんなにカッコいいとは言えないが、
60~70年代らしいサウンドで、
とてもエキサイティングで味わい深い。
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TOYBOX (土曜日, 18 12月 2021 18:43)
初めまして。
ブラスバンドは苦手でしたので、シカゴで好きな曲は、クエスチョンズ67-68とこの曲くらいですね。
学生の頃、駅前のパチンコ屋「パチンコ」のネオンが古いため、一つずつ消えていきました。
ある日「パ」が消えました。
ある日「チ」が消えました。
つまらない話ですいません。
福嶋誠一郎 (土曜日, 18 12月 2021 20:07)
コメント、パチンコ屋にまつわるお話ありがとうございます。面白いお話ですね。僕がパチンコをやったのはまだ手動が主流の時代です。パチンコが出来る大人に憧れていましたが、いざ大人にやってみると、あんまりおもしろくありませんでした。