週末の懐メロ54:ロックバルーンは99/ネーナ

 

1983年、ドイツで生まれたロックナンバーが

翌年、アメリカをはじめ、日本やイギリスなど、

世界中を席巻した。

 

わたしに時間をくれたなら

あなたのために歌ってあげるよ 

地平線の彼方へ飛んで行った

99個の風船の歌よ

 

抜群にノリがよく、

メロデイーもサウンドも歌声もキュート。

明るくポップでパワフルな、

まさしく1980年代屈指の世界的大ヒットだが、

内容は反戦の意思を志を秘めた寓話の世界の歌だ。

 

風に乗って飛んで行った風船を

敵国の爆弾と勘違いして、

軍人や政治家が大騒ぎして

攻撃を仕掛けるさまを

ちょっとコミカルなメルヘンのように歌う。

 

99年間の戦争の果て、勝者なんて誰もいない

国もない 大臣たちももういない 

戦闘機の影もない

 

いつもの道を歩いて行ったら

瓦礫の街の片隅に 1個の風船を見つけたの

そしてあなたのこと思いながら 空へ飛ばしたの

 

「ネーナ」はこの曲を世に送り出したバンドの名前であり、

ヴォーカリスト・ネーナ・ケルナーの名前でもある。

もともとはスペイン語で

「ちっちゃな女の子」という意味らしい。

 

最初にドイツと書いたが、正確には1983~84年は

「西ドイツ」だった。

当時はまだベルリンの壁が存在し、

ドイツは西と東に分断されていたのだ。

 

その壁が崩壊したのは、この曲のヒットから

5年後の1989年11月9日。

32年前のことである。

 

ベルリンの壁の崩壊は、

アメリカとソ連の冷戦終結を意味していた。

対立と分断の時代が終わり、世界中の人々が手を取り合い、

より良い世界が訪れる――

多くの人がそんな、限りなくリアルな夢を抱いた。

 

けれども現実はそんなに単純なものではなかった。

世界は新たな混乱と暴力と分断の時代に

入ってしまった。

32年経ったけど、

いまはまだ夢の途中なのだろうか?

 

ふたたびネーナの話。

バンドは解散し、ヴォーカルのネーナは一時引退し、

5人の子どもの母となり、そして歌の世界に帰って来た。

この「ちっちゃな女の子」は僕と同い年である。

 

3年前の映像だが、アラカンでこの若さと元気さ。

親子世代がいっしょに歌う、今なお新鮮なポップロック。

21世紀のロックバルーンに

驚きと感動を抑えることができない。

 

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