1995年末のリリースのサードアルバム
「メモリー・オブ・トゥリーズ」の代表曲。
エンヤという稀有なミュージシャンの
代表曲とも言えるかもしれない。
このアルバムはちょうど息子が生まれた頃よく聴いていた。
中世を思わせるケルトの民族ドレスをまとった
エンヤのジャケットがとても神秘的で美しかった。
エンヤは1980年代の終わりごろから
アイルランドの歌姫として
世界のミュージックシーンで知られるようになった。
その登場は衝撃と言うよりも、
当時のワールドミュージックの潮流に乗って、
まるでひたひたと潮が満ちるように、
いつの間にかそこに存在していたという感じがする。
ワールドミュージックは
ごく大雑把に言えば、
現代文明が構築される以前の人間が
どう時間を捉え、どう人生を捉えていたかを
歌と音で伝えるツールである。
「エニウェア・イズ」は
人生の謎について問いかけ、答える歌だが、
ポップでありながら宇宙の律動のような響きを持っている。
いろいろな人の和訳を拾ってみると
最後のほうではこんな内容のことを歌っている。
何度やり直しても、どの道を選んでも
また新たな始まりが始まる。
ずっと答を探し求めてきたけど
終わりを見つけることはできない
今ここにあるこの道、
そして、向こうに広がるあの道
どっちを選んでもいい
今、わたしが選んだこの道も
あの頃のわたしが選んだあの道も
みんな始まりに過ぎないのかもしれないし
終わりはすぐそこなのかもしれない
人間ひとりの脳の中には
さまざまな次元の時間が流れている。
親子であっても、夫婦であっても
共有できるのは、そのほんの一部に過ぎない。
広い社会の中ではなおのこと。
若い頃は単一方向にしか流れていなかった時間が、
齢を取ってくると、放射状にあらゆる方向に伸び始める。
細かく切り刻まれた
現代社会における時間とは対照的な、
山上からな海へ向かって流れ続ける大河のような時。
個人の過去。
日本という国・地域の文化に包まれ過去。
ヒトという地球に生きる種族の過去。
個人の未来。
日本という文化の未来。
ヒトという種族の未来。
それらすべてを孕んで僕たちの現在(いま)がある。
始まりもなく終わりもない道をどう歩いてゆくのか。
きっとEnywhere、どこへでも歩いてゆける。
エンヤの歌を聴くと、いつもそんなことを考える。
音楽エッセイ集
ポップミュージックをこよなく愛した
僕らの時代の妄想力
4週連続無料キャンペーン
第4回:10月2日(土)17:00~3日(日)16:59
収録33編
●八王子・冨士森公園のスローバラード駐車場で、ポップミュージックをこよなく愛した僕らの時代の妄想力について考える
●アーティストたちの前に扉が開いていた
●21世紀のビートルズ伝説
●藤圭子と宇多田ヒカルの歌う力の遺伝子について
●ヘイ・ジュード:ジョンとポールの別れの歌
●阿久悠の作詞入門
●余命9ヵ月のピアニスト
●ローリング・ストーンズと新選組の相似点について
●キング・クリムゾンの伝説と21世紀版「風に語りて」
●プログレッシヴ・ロックスターの死①:ジョン・ウエットンの訃報、そしてロンドンの寿司
●プログレッシヴ・ロックスターの死②:キース・エマーソンの尊厳死(1周忌に捧ぐ)
●勝手にビートルズ・ベストテン
●中学生時代の「エリナ・リグビー」の衝撃と和訳演奏
●純情ストーカー男と純心DV願望女の昭和歌謡
●人間は幸せに慣れると、幸せであることを忘れてしまう
●義弟のアナログレコードと帰ってきたカレン・カーペンター
●いちご畑で抱きしめて
●ダイヤモンドをつけたルーシーとの別れとジュリアンの心の修復作業
●抹消された20世紀パンクと想像力の中で生きる19世紀型スチームパンク
●悲しいことなんてぶっとばすロックンロールバンドのモンキービジネス
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●見捨てられた恋人のようだったアナログレコードが、 なぜ絶滅の淵から回帰したのか?
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●自分をリライトする
●よみがえる死者・よみがえる歌:AIの音楽
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●だいじょうぶです、なすがままになさい
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