♪八王子・冨士森公園のスローバラード駐車場で、ポップミュージックをこよなく愛した僕らの時代の妄想力について考える
八王子市の中央部にある富士森公園の駐車場は、
ある一部の人たちにとって特別な場所である。
ある一部の人たちというのは、RCサクセション、
あるいは忌野清志郎の音楽が好きな人たちだ。
ちなみにそこには僕自身も含まれている。
この駐車場は彼らの名曲「スローバラード」の舞台なのである。
清志郎は、市営グランドの駐車場に停めた車の中で
女の子と手をつないで眠ったと、その曲の中で歌っている。
そうなのだ、ここはもともと運動公園で
陸上競技のグランドになっていた。
おそらく清志郎がこの歌を作った若かりし頃は、
現在のようにきちんと整備・舗装されていない、
土の駐車場だったのだと思う。
そんなイメージを抱きながら、
僕は仕事の合間にこの入口に立ち、
頭の中にスローバラードの切ないメロディを響かせてみた。
すると一瞬のち、この場所は
もう何の変哲もないただの駐車場ではあり得ず、
光り輝くロックの聖地に変貌を遂げる。
おそらく僕だけでなく、
一九六〇~七〇年代のロック・ポップミュージックに
浸っていた輩は、こうした想像力が旺盛だ。
当時はインターネットはおろか、
まだミュージックビデオさえもなかった。
僕たちが得られる音楽周辺の情報は、
一部の音楽雑誌に載る記事と、
ごく限られた写真、ラジオ、ごくたまにテレビ、
そしてレコードジャケットのアートワークと
ライナーノーツだけだった。
現代と比べればごくわずかなそれらの情報をタネに、
僕たちは想像力を駆使して、
その音楽の中からほとばしる感情を受け止め、
立ち現れる世界に没頭し、
ひとりひとりが自分の感性によりぴったりくるよう
頭の中でアレンジを施し、
「自分の歌・自分の音楽」に育てあげていた・・・。
(2017年10月4日)
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