作詞・松本隆、作曲・吉田拓郎というレアな取り合わせ。
1975年に歌ったのは「トランザム」というグループだった。
それにしても。またもや松本隆のマジカルワードワールド。
聴けばわかるが、この曲は数え歌になっている。
1970年代の若者の心情を
1から10までの数を使って見事に歌に仕立て上げた。
この歌詞のユニークさと完成度はどうだ。
じつはこの「ああ青春」は
最初、インストゥルメンタルで
ドラマのオープニング曲に使われていた。
僕が高校生の時にやっていた
そのドラマ「俺たちの勲章」は、
革ジャン・グラサンの松田優作と
スリーピース・バギーパンツの中村雅俊の
対照的なコンビが主人公の刑事ドラマだった。
「バカヤロー、コノヤロー」と、
容疑者の胸ぐらをつかんでぶん殴る
松田ハードボイルド刑事を、
中村ソフト刑事が「まぁまぁ」となだめる。
そんな感じで犯罪捜査と青春を
掛け合わせたような話だった。
原曲はフォークっぽくて、
トランザムとは別に中村雅俊もその後、
自分のアルバムの中で歌い、持ち歌の一つにしていた。
ゴーイング・アンダーグラウンドは
1990年代から活動しているバンドで、
中村にオリジナル曲を提供したこともある。
青春ロックを売りにしていたので、
この曲をロックアレンジにして
中村と共演することになったらしい。
こうしてロック調で聴くと新鮮で、
懐かしい原曲とはまた違った味わいがある。
ほんとうに良い曲だ。
一時期、「青春」なんて口走るのは恥ずかしかったが、
この齢になると、もうべつに恥ずかしくも怖くもない。
この曲も今でもそらで口ずさめてしまう。
10代の頃からまったく成長していない
ってことなのかもしれない。
音楽エッセイ集
ポップミュージックをこよなく愛した
僕らの時代の妄想力
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第1回:9月11日(土)16:00~12日(日)15:59
収録33編
●八王子・冨士森公園のスローバラード駐車場で、ポップミュージックをこよなく愛した僕らの時代の妄想力について考える
●アーティストたちの前に扉が開いていた
●21世紀のビートルズ伝説
●藤圭子と宇多田ヒカルの歌う力の遺伝子について
●ヘイ・ジュード:ジョンとポールの別れの歌
●阿久悠の作詞入門
●余命9ヵ月のピアニスト
●ローリング・ストーンズと新選組の相似点について
●キング・クリムゾンの伝説と21世紀版「風に語りて」
●プログレッシヴ・ロックスターの死①:ジョン・ウエットンの訃報、そしてロンドンの寿司
●プログレッシヴ・ロックスターの死②:キース・エマーソンの尊厳死(1周忌に捧ぐ)
●勝手にビートルズ・ベストテン
●中学生時代の「エリナ・リグビー」の衝撃と和訳演奏
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