俳優・田村正和さんの訃報が報じられた。
特に熱心なファンではないが、
1990年代に作られた
彼が主演した二つのドラマは好きだった。
一つはフジテレビの「古畑任三郎」。
たぶん今でもファンの多い、
「刑事コロンボ」をオマージュとした推理ドラマ。
60分1話完結、
古畑が対決する犯人役を
当時の人気俳優らが演じて話題を呼んだ。
脚本家・三谷幸喜の名を
世間に知らしめた作品でもある。
田村正和はそれまでの2枚目俳優とは
ひと味違う、コミカルさを併せ持った
絶妙の味付けで、主役の古畑を演じて
ファンを増やした。
「美しい人」は1999年の最後に放送された
TBSの恋愛ドラマ。
田村正和演じる凄腕の整形外科医が、
DV夫から逃げてきて「顔を変えてほしい」
と言う女(常盤貴子)の頼みを聞く。
そして、彼女の顔を自分の
愛する亡き妻の顔にしてしまう。
しかし、彼女のDV夫は刑事(大沢たかお)で、
その正体を見破り、執拗に追跡を続け、対決を迫る。
最終回はこのすごい設定を上回る
衝撃的なラストで、
今も胸に食い込んで離れない。
脚本が野島伸司。
当時、彼の作品はエッジが立ちまくり、
それでいて高視聴率を稼ぎ出すという
離れ技をやってのけていた。
昨日。昼飯時に「徹子の部屋」を見ていたら
追悼特集で田村さんのインタビューを流していた。
1993年と2011年の2回出演したという。
その間18年。
確かに二人とも齢を取っているのはわかるが、
それだけ時間が経っていることが
なんだかとても不思議に感じられた。
昭和後半から平成前半にかけて活躍した人たちが
次々とこの世を去る一方、
テレビでもネットでもどんどんアーカイブ映像が増える。
そうすると、そのうち誰がまだ生きていて、
誰がもう亡くなってしまったのか、
だんだんわからなくなってきそうだ。
人々の脳の中で時が止まる。
メディアに出ていた人たちは、
アーカイブの中で永遠に生き続ける。
そして現実と虚構の境界線も薄れてくる。
ふと、「美しい人」で
田村正和が演じた彼と、
常盤貴子が演じた彼女は、
今どうしているのだろうかと考えた。
年老いても元気に仲良く一緒に、
しあわせに暮らしているのだろうか、と・・・。
田村正和さんのご冥福をお祈りします。
おりべまこと電子書籍
まじめでおもろい還暦エッセイ
昭和エッセイ集
昭和96年の思い出ピクニック
http://www.amazon.co.jp/dp/B08WR79ZCR
コメントをお書きください