久しぶりに京極夏彦の妖怪小説を読んでいる。
古本屋であり、神道の祭司でもある京極堂と
薔薇十字探偵社の面々が活躍する、
このサイコミステリーは、
昭和28~29(1953~54)年あたりの時代を舞台に展開する。
その前年の昭和27(1952)年の
サンフランシスコ講和条約によって、
戦後7年間、日本を占領していたGHQは去り
(米軍基地は全国各地に残されたが)、
日本は国家としての主権を取り戻した。
しかし、まだその直後は、国全体が
独立した喜びよりも、頼ってた保護者をなくした
子どものような不安な心理状態のほうが勝っていた。
その不安心理が、妖怪という幻視となり、
恐ろしい殺人事件につながる。
京極堂妖怪小説シリーズは、
かの時代の精神分析を試みた作品だともいえる。
それは京極氏がデビューした、
平成が始まって間もない1990年代の平成初期、
そしてコロナ禍に見舞われた令和初期の現代と
共通する何かを持っているようだ。
作品の中には、昭和28年にはタブーだったと思われる
家族同士の相克・殺し合いの問題や、
ジェンダー問題などに切り込んだものもある。
今回のは京極堂の妹・敦子(雑誌記者)を主役に据え、
のっけから女学生らの河童をめぐる
可愛くてリズミカルなやりとりから始まる。
殺人事件の謎・人の心の暗闇を解き明かす
ミステリーであることに変わりはないが、
以前のヘヴィでダークななイメージと異なる
マイルド&ライトな感覚。
辞書みたいなぶ厚さだった旧シリーズと比べて
ボリュームも軽いので気楽に読める。
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