3月は「なごり雪」の季節。
新しい季語まで生んだこの歌は、
僕が10代の頃からもう時代遅れな世界だった。
ロマンチックに感じて当時のガールフレンドと
真似事をしたことはある。
だけど、新幹線や特急列車が続々と
日本中を走る時代になり、
こんな別れのシーンは、1980年ごろには
古びた映画みたいなストーリーになっていた。
かぐや姫の伊勢正三が作り、
アルバムにひっそりと収められていた曲を
イルカがカバーして1975年に大ヒットさせ、
ほとんど彼女の代名詞になった。
子どもなのか、大人なのか、
女なのか、男なのか、
いまいち判然としない彼女が歌うことで
「なごり雪」は一つのファンタジーに昇華した。
いまや懐メロ中の懐メロ。カラオケの鉄板。
いろんな歌手がカバーしているので、
若い世代にもよく知られた人気曲になっている。
70代以下の日本人なら、
知らない人はいないと思われるくらいだ。
昨年の大みそかにテレビ東京の歌番組
(冒頭の徳光和夫さんのアナウンスから涙が出る)
で放送された、たぶん最新のイルカの映像。
いつまでたっても変わらないその風貌に
ずっと不思議な思いを抱いてきたが、
久しぶりに見て、ちょっとショックを受けた。
彼女も齢を取った。
時がゆけば幼い君も
大人になると気づかないままだったんだ、僕は。
独特の伸びやかな声は失われつつあり、
もう高い音を出すのが苦しそうだ。
けれども、それが新しい味付けになっているようにも聴こえる。
長年彼女が歌い続け、たくさんの人が愛して育ててきた名曲は、
この先、「ふるさと」や「赤とんぼ」のような
日本人の心の故郷の歌になっていくのだと思う。
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