静寂の中に響くクールな歌声と呼吸。
きっとどこかで楽器が入ってくるのだろうと思っていたら、
耳に届くのは最後までそのまま彼女の声と呼吸だけだった。
描かれるのは、ニューヨークの雨の朝。
トムの店でコーヒーを飲んでいた主人公は、
むかしむかし――雨が降り出す前の、
真夜中のピクニックのことを思い出し、
コーヒーを飲み干して電車に乗るために立ち上がる。
2分ちょっとの短い物語が不意に終わったとき、
背中がぞくぞくっとしたのを思い出す。
スザンヌ・ヴェガ、1984年の傑作アルバム
「孤独(ひとり)」の冒頭を飾る鮮烈なアカペラ。
都会の片隅の、奇妙に居心地よい孤独。
思い思いに生きる人たちの
それぞれの呼吸が聞こえてくる。
世間はとやかく言うけど、
ひとりぼっちもそう悪いものじゃない。
いくつになっても孤独な姿でステージに立つヴェガの
優しいメッセージが、
この曲に込められているような気がする。
昭和96年の思い出ピクニック」/おりべまこと
ASIN: B08WR79ZCR ¥318
アイドル、マンガ、オカルト、オリンピック、新聞配達、家族、そして戦争――
昭和には愛すべきもの、憎むべきもののすべてがあった。
2021年=令和3年=昭和96年になった今でも、僕たちは昭和の物語から離れられない。
海を埋めたて、山を切り開き、明日へ向かって進んだ果てに見つけたものは何だったのか?
みんなが愛して憎んで生きた時代を1960(昭和35)年生まれの著者が探検する面白まじめエッセイ集。ブログ「DAIHON屋のネタ帳」から30篇を厳選・リライト。
もくじ
・西城秀樹さんのお葬式:青春の同窓会
・ちびまる子ちゃんとサザエさんはいつまで続くのか?
・昭和オカルト大百科
・新聞少年絶滅?物語
・死者との対話:父の昭和物語
・社会全体の児童虐待と「晴れた空」
・東京ブラックホールⅡ:「老いた東京」は美しいか?
・さらばショーケン:カッコ悪いカッコよさを体現した1970年代のヒーロー
・さらば平成――みんなが昭和に帰りたがった30年
・永遠の昭和 明日のための1960年代・70年代 ほか
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