先日、金融詐欺で3000万円を騙し取られた
お坊さんの話を書いたが、
昨日はコロナで失業した男からお金を騙し取られたという
ニュースを見た。
ただし、こちらの金額は1万円である。
「コロナで働き先ない 43歳、寺から1万円詐欺容疑」
(朝日新聞デジタル)
https://www.asahi.com/articles/ASP255H22P25UTIL01T.html
住所不定無職の43歳の男が、コロナ禍で仕事を失ったうえ、
実家に帰る費用がないと嘘をつき、東京都足立区の寺の
住職の息子から現金1万円をだまし取ったとして、
詐欺容疑で逮捕されたという。
住職の息子は「交通費を貸してほしい」と相談されて
貸したが、1カ月が過ぎても返金がないので
警察に相談に行った。
警察は都内のほかの寺院に注意喚起し、
借金を頼まれたら警察に通報するよう要請していた。
そこへこの男が今月3日に中野区の寺で
借金を頼んだことがわかり、
現場で取り押さえられたという。
このニュースを見て、ぱっと頭に浮かんだのは
「レ・ミゼラブル」である。
貧しさ故、パンを盗んで牢屋に入れられた
主人公ジャン・バルジャン。
やっと出てきて路頭に迷った末に、
拾ってもらい慈悲を掛けてもらった教会から
恩を仇で返すかのように、高価な銀食器を盗み出した。
すぐに警察に捕まって「これはおたくの食器ですね」
と警官に尋ねられた神父様は、
「はい、さようです。しかし、これは私がこの人に譲ったもの。
これだけではない。この教会にある銀食器はすべてこの人に
譲ったのです。
さあ、これも持っていきなさい。これも、これも」と、
持ちきれないほどの銀食器を持たせる。
思い出しながら書いているので正確ではないが、
とにかくそんな神父様の慈悲の心に触れ、
こころ動かされたジャン・バルジャンは、
貧しさに負けていた自分を恥じて悔い改め、
まっとうな人間への道を歩み始める。
世界名作「レ・ミゼラブル」序盤の
最も感動的なシーンである。
で、思った。
どうしてこの足立区の住職の息子をはじめ、
金をだまし取られたという都内のお坊さんたちは、
宗教者でありながら、このレ・ミゼの神父様のような
広い心がないのだろうか? と。
そんなの作り話じゃんか、同じことできるわけないだろ!
と言われればそれまでだ。
しかしたとえば、この詐欺男に対して、
「それは大変ですね。
1万円ではその場しのぎにしかならないでしょう。
10万円持っていきなさい。いや、それでも足りない。
100万円あれば生活をやり直せるのでは?
わたしの貯金を取り崩しましょう。何ならもっと・・・」
とでも言えば、詐欺男も動揺して
「も、申し訳ありません、お坊様。
私は嘘をついておりました。どうかお許しください!」
と改心し、生まれ変わる
・・・という展開だってあり得たかもしれない。
半分冗談だけど、半分は本気です。
こんな悪事、こんな詐欺を放っちゃおけない、
という正義感で警察に訴えたのかも知れない。
だけど、世間一般と同じ論理、同じ善悪の基準でしか
人間に対せないのなら、
宗教者の存在意義って、どこにあるのだろう?
宗教者はやっぱりレ・ミゼの神父様のようであってほしい。
少なくともその片鱗くらい見せてほしい。
もちろん、超能力とか霊能力の類は要りません。
説教だけでなく、人の心を動かすような
立ち居振る舞いをしてほしい。
コロナ禍で困っている人が大勢いる今こそ
存在感を発揮するべきではないか。
この男だって最初は騙してやろうというつもりではなく、
本当に困っていたのではないか?
お寺なら何とかしてくれると思ったから来たのではないか?
それで最初は返すつもりだったけど、
なかなかうまくいかず、つい甘えてしまっただけではないのか?
同情し過ぎ、弁護し過ぎだろうか?
いずれにしても、
ああ、やっぱり人間には宗教というものが必要なんだ、
神様や仏様を敬わなきゃだめだと、
思い知らせてほしいのだけど、
現代では難しいことなんだろうね、たぶん。
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