節分は過ぎたけど鬼の話。
鬼といえば今や「鬼滅の刃」。
だいぶ遅くなったが、映画を見て来た。
節分の日。平日の午前中に行ったので映画館はガラガラ。
そういえば昨年は一度も映画館に来なかった。
さすがにAmazonPrimeで配信されるまでは待っていられない。
何といっても興行記録を塗り変えた映画である。
すごい! とまではいかないが面白かった。
「強く生まれた者は弱き者を守る使命があります」。
これがこの映画のメッセージであり、
主人公の炭治郎らが鬼と戦う理由である。
このセリフを言うのは、もう一人の主人公である
煉獄杏寿郎の母である。
病の床にあった母は、まだ少年だった杏樹郎に
この言葉を残して亡くなる。
鬼との戦いの中で杏樹郎の脳裏にその情景がよみがえるのだ。
ここで両隣に座っていた女性が泣き出した。
そのあと、最後までほぼ泣きっぱなし。
見た感じ、中年ぽかったのでお母さんなのかも知れない。
「鬼滅の刃」の人気の秘密は、
こうした女心に突き刺さったからである。
女子ウケしなければ、
ここまでの大ヒットにはならなかっただろう。
概して女性はそれぞれの技やバトルアクションよりも
登場人物らの過去の物語に関心を寄せる。
なぜ彼らはここで、こうした姿で戦っているのか、
その物語(バックストーリー)に心奪われるのである。
それは主人公チームだけでなく、
敵である鬼も同様。
鬼はもともと人間であり、
心を支配した強い思い――怨念、執念、嫉妬、憎悪などが
血肉を得て形になった化け物なのだ。
鬼の中にも泣かせるドラマがあり、
日本人の影の歴史がある。
この映画「無限列車編」には、
人間を眠らせ、夢を見させる鬼が登場する。
幸福な夢にどっぷりつからせ、その間に潜在意識の中にある
精神の核を潰して廃人にしてしまう――という恐ろしい術策だ。
というわけで眠らされた炭治郎たちは、それぞれの夢を見る。
これによって原作もテレビシリーズも観てなくても、
主人公の炭治郎がどういう運命を背負った少年なのか、
何となくわかるようになっている。
これも女子ウケの大きな要因だが、
このマンガの大テーマは「家族愛」である。
敵である鬼もまた家族愛の悲劇から生まれる。
もともと人間だったのに、どうして鬼になったのかという
物語もまたよく描かれている。
この映画では母の遺言を守り、
命を懸けて無限列車の乗客を守る煉獄杏寿郎の姿に
多くの女性が涙し、杏寿郎人気が爆発したようだが、
僕はその前の、自分の夢と戦う炭治郎のシーンが面白かった。
そこには大正時代から現代までの約100年間の
日本人の家族に対する考え方・マインドの変化が
表現されているように読み取れる。
長くなりそうなのでまた明日。
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