エミリー・ブロンテの「嵐が丘」の舞台は、
イングランド北部のヨークシャー州にある
ハワース (Haworth) という小さな村である。
僕は1980年代から90年代にかけてここに3~4度くらい訪れた。
今はどうだか知らないが(最後に行ったのはもう25年前だ)、
ロンドンから半日バスに乗り、途中でSLに乗り換え、
やっとのことでたどり着く。
そのアクセスの過程も含め、
ストラトアフォード・エイボン(シェイクスピアの生地)や
湖水地方(ピーターラビットゆかりの土地)と並んで、
イギリスの地方で最も印象深い場所だ。
一応、有名観光地ではあるが、
僕がよく訪れていた時代は、いつ行っても観光客はまばらで、
B&B(民宿)もパブものどかな雰囲気で楽しかった。
エミリーは3姉妹の真ん中で、
姉のシャ―ロットは「ジェーン・エア」
(これも来年再読予定)、
妹の「アグネス・グレイ」(これは読んだことない)の作者。
ブロンテ姉妹の資料館もあり、お土産も売っている。
毎回、嵐が丘(アーンショウ家の屋敷)のモデルとなった
トップウィンゼンという廃屋を目標に、
ほぼ1日かけて丘歩きをするのだが、
ヒースの花咲くムーアの大地を踏みしめ、
次々と雲が流れていく空を見上げると、
何か大きなものに抱かれているような気分になる。
そしてしばしば、文字通り、嵐に見舞われた。
丘を吹き抜ける風は強烈で、
傘などあっという間に吹っ飛ばされて、
全く役に立たない。
レインコートとウォーキングシューズは必需品だ。
トップウィンゼンでは休んでいると
羊たちがメエメエ寄ってきて、
最初は人なつっこくて可愛いなと思うのだが、
いつの間にか、結構ごっつい羊の大群に囲まれてしまって、
ちょっと怖い目にも遭う。
いずれにしても他の土地では到底味わえない、
嵐が丘の特別な旅がそこにはあった。
最近は湖水地方などは、ピーターラビットを目当てにした
海外からの観光客があふれて大変だ、
という話を聞いたことがあるが、
嵐が丘の物語の舞台はどうなっているのだろうか?
ハワースに行って昔ながらのイングリッシュブレックファーストや
シェファーズパイなどのパブランチを食べたいなと時々思う。
最近のロンドンではめっきりお目にかからなくなった、
おしゃれじゃない、、どんくさくて、あんまり“おいしくない”
悪評たらたらのイギリス料理が似合う、
グルメなどとは無縁の土地なのだ。
そういえば「嵐が丘」の物語の中では、
アーンショウ家でも、リントン家でも、
豪華な肉料理やスイーツなどは全然食卓に上らなくて、
穀類のおかゆとか、正体不明の煮込み料理みたいなのを
食べていた。
野うさぎの話がところどころ出てくるので、
うさぎのシチューなんかは食べていたのだと思う。
それと乳製品。
グルメなど笑い飛ばすような、
味のある旅ができるかもしれない。
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